● release A
そしてバッシュは特に何かを考えていた訳ではない事を彼に伝えた。
すると少年は微かに笑うと海を見て述べた。
「バッシュの言う通り、眠れないんだ…。」
明日はリドルアナ大瀑布に行く。
天陽の繭があるかもしれない場所だ。
何が起こるのか想像も出来ない。
だから彼が中々眠りに付けない訳も分かる。
実際バッシュ自身、何処か気持ちが落ち着かず此処で海を眺めて居たのだから。
しかしバッシュは敢えて彼に述べる。
「ヴァン、眠れなくても出来るだけ身体は休めておいた方が良い。」
ヴァンはくすっと笑うと海を見たまま、お互い様、とだけ言った。
確かに自分が言えた立場では無いなと考え、バッシュは頭を少し掻くと苦笑する。
そんな様子のバッシュに気付いて、ヴァンは可笑しそうにニコリと声を出さずに笑った。
「なぁ、バッシュ。」
「ん?」
「…ありがとう。」
暫くの間の後、突然ヴァンがそう言った。