● 君のせい 5
「おい。」
急に背後から掛けられた声にヴァンはビクリと肩を震わせる。
今まさに考えていた人物の声を聞いて胸の動悸がドキリと激しく鳴る。
ヴァンがゆっくり振り向くと先程自分のお馴染みに水をやっていた空賊の男―――バルフレアが呆れた顔をしながら面倒臭そうに息を吐いた。
「んな熱苦しい所に突っ立ってないでちゃんと休め、干からびるぞ。」
「う、うん。」
用件だけ伝えるとヴァンの返事もろくに聞かず、すたすたと歩いていってしまうバルフレアにヴァンは小走りで追いかける。
あと数歩で横に並ぶという所で歩みを一度止める。
距離1m程………
バルフレアの直ぐ後ろについて、ヴァンはまた顔を自分の足元に向けてゆっくり歩き始める。
―――ヤバい…、何か凄い、顔暑い。
赤面しているのを誰かに悟られたく無くてヴァンは下を向きながらも必死に平静を装って歩く。