何を言いたかったのか、何を聞きたかったのか、上手く言葉に出来ずアーシェは口籠もる。
ヴァンは暫く待つ物の何も言い出さないアーシェの―――自分の腕を掴んだままの―――手を握ると微笑み掛け、歩き出す。
「行こうっ、アーシェ!」
思ったより大きな暖かい手に、力強い歩み…自分より少し広い肩幅に小さいながらも頼りがいの有る背中。
そして心に何か温かい物を与えてくれる彼の笑顔。
そんなヴァンを見てアーシェは心の中で考えを纏める。
―――自然体で人の善さを持った人。
―――私に欠けた部分を持った人…。
―――………でも、
―――貴方は何を思って言ったの?
―――貴方も、私と同じ思いを持って居るでしょう?
纏まりかけた考えを今更口に出す事は出来ず、今は前を見て進む。
今出来る事、やるべき事をやっていく決意を改めてする。
そしていつか彼の本心を知りたいと思う。
自分自身の為に―――。
2009.08.31.mon. norika 拝