● Bird -自由- C
瞬間、アーシェはどきりとした。
『自由』と言う言葉を彼が口にするとは思いもよらなかったからだ。
自分は今一度もその言葉を口にしなかったにも関わらず、彼はその言葉を選んだ。
少なからず動揺したアーシェはそれをヴァンに悟られない為に睨んだまま黙る事しか出来なかった。
ヴァンは後ろに手を着くと、木の枝に止まった鳥を見上げた。
「鳥はさ、身体を休める為の枝が無ければ海を渡れない。
…何処へも行けないんだ。
それこそ翼を失ったら後は、もう………。」
ヴァンは下を向き首を左右に振った。
その話を聞いてアーシェも下を向く。
人々の象徴である鳥でさえ、決して自由では無い。
自分が今自由になれる訳でも無い…分かって居る。
その現実を突き付けられた様でアーシェは歯噛みする。
「でもさっ。」