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掴まれた手にはあまり力が入っておらず、そして想像していたよりずっと大きく逞しい掌だった。

それは自分が彼に気付いた時に直ぐ解かれたが、妙に手に感触が残った。


「大丈夫か?」


そう問われて一瞬何の事か理解出来なかったが、直ぐに下車する時の事だと理解した。


「平気よ、久々にこんな電車に乗ったけど。
大丈夫。」


そう言って、アーシェは何でもないという風に手をひらひらと振って見せた。

だが、当然機嫌は良くなる訳も無く、うんざりしながらも、改札口に着いたら直ぐに出られる様に鞄から先に定期券だけを取り出す。

すると、次の瞬間ひょいと鞄をヴァンに取られた。

あっ、とアーシェが声を短く上げると彼はアーシェが次の言葉を紡ぐ前にニッコリと笑って言った。


「先に教室に持って行っとくよ。
そっちの校舎に寄る用事あるしっ。」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

「じゃっ!」


制止の言葉を無視してヴァンは風の様に行ってしまった。


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