● 10000hit F

人の流れに乗せられ、彼は自分の意思とは関係無く、転けそうになりながらアーシェより先に下車した。

すると途端にアーシェにドッと圧力が掛かり、手摺りにガンッと腕をぶつけた。

扉と座席の間に押し退けられて、人々が一刻でも早く降りようと急いて居る姿を、腕を摩りながら見ていた。

今日は碌でもない日だと彼女は思いながら、押し寄せて来た人々が一通り下車したのを見計らって、ようやく自身も下車した。

下車して直ぐに辺りを軽く見回すが、多くの見も知らぬ人々が溢れて居るだけだ。

そしてふと、何故自分が“辺りを見回した”のかを考え、自分自身に呆れた。

そんな事をする必要は無いのに。

先程の行為は気にせず―――と言うよりも無かった事にして―――改札に向かおうとすると、ぱっと誰かに手を掴まれた。


「アーシェッ。」


驚いて振り向いたのと、声を掛けられたのは同時だった。

目の前で自分の名を呼んだのは、先に行ってしまったと思われた少年だった。


- 125 -

*← | contents | →#

* TOP *
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -