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これだから満員電車は嫌なのだと。
しかし、これだけ人が居るのに今日は圧迫感が少なく感じられた。
すると不意に声を掛けられた。
「アーシェとこの時間に会うのって初めてだよな。」
暑苦しい車内で実に爽やかにヴァンが言った。
こんな狭い車内だが、彼は何故か躍動感が漲り、今にも元気に走り回りそうな印象を受けた。
今の自分とは対称的に、彼は何処か浮き浮きとして居る様にも思えた。
「………いつもはもっと早い時間の電車に乗るから。」
「んじゃ、今日はラッキーだったな。」
応えるつもりは無かったが、何となく彼に押されて、かなり遅れて返事をした。
すると返って来たのは予想外の言葉で、言ったヴァンはニッコリと笑ったが、その言葉の意味を理解出来なかったアーシェは訝しげに彼を見た。
どういう意味か?、と目で問えば、珍しく空気を読んだ彼は実にあっさりと述べた。
「だってアーシェと一緒に通学出来ただろ?」
「なっ!!」