● unreasonable B
今度は確かに聞こえたその音にハッとして面を上げると、巨大な影が目に入る。
それは猛スピードでこちらに襲い掛かって来た。
身体を噛み砕こうと剥き出した鋭い牙を何とか剣で受け止めると、その衝撃が腕から身体へと電流の様に走った。
―――リンブルウルフだとっ!?
その痛みに耐えると疲労により重たくなった身に鞭を打ち、何とかその身を翻し体勢を調えた。
リンブルウルフは鋭い眼光と強靭な牙で威嚇する。
仲間を殺され憤慨して居るのは明らかだった。
今の状態では奴に勝利するのは難しいと判断し、この場を逃げ切る事に専念しようと考えた。
この“陽炎立つ地平”は比較的ラバナスタに近い位置にあったのでそれは可能に思えた。
「せいっ!」
魔法を唱えてこちらから攻撃を仕掛けると、予想に反して一瞬の隙も見せずに敵は怒り狂った様に襲って来た。
敵の攻撃にバランスを崩すと、リンブルウルフは伸し掛かって来た。
「くっ……!!」