● unreasonable A

少しだけ見える自身の脚にも擦り傷が窺えた。

冷たい岩はあっという間に大量に掻いた汗を冷やし、身体の熱をいとも簡単に奪いさって行った。

非情にも風は味方をしてくれず、体温を奪った挙句、砂漠の砂を巻き上げた。

そして風の音は無情にも誰かの悲鳴に聞こえた。



そして錯覚を起こす。



それはまるで自分が奪って来た者の叫び声の様だと。





グルルゥゥ…、と音が聞こえた気がした。

それはまるで地獄から聞こえる様に酷く気味の悪い音で背筋がぞっとした―――あるいはそれはただの寒気だったのかも知れない―――。

念の為辺りを確認するが、変わらず虚しく空を斬る風の音とそれによって舞い上がった塵に雲の無い空だけだった。

気付けば疲れ果てた肉体は泥の様に重く、腰を上げるのが躊躇われる程に疲労して居た。

その事に気付いた時、確かに思った事があった。


_____ジャリッ


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