● 『嘘』
『優しい嘘は人を傷付けるだけ』
そんな誰かが唄った歌を口吟む。
“偽りの愛なんて人を傷付けるだけ”
流したくない雫がぽたりと落ちる。
「どうして、あんな事言ったんだょ………。」
判ってる。
それはアンタが優しいから。
………いゃ、違う。
そう思わせてるだけ。
アンタは酷い。
優しい笑顔
甘い言葉
愛しい態度で
虜にする。
心を離してくれない。
いっそボロボロにしてくれ。
アンタの事なんて一秒たりとも思い出したくない程に。
どうしてそうしてくれないんだ?
それも判ってる。
全部アンタが狡いから。
アンタは剥製みたいだ。
中身はただの大鋸屑。
ううん、きっともっとタチが悪い。
躯を蝕み、クイモノにする寄生虫だ。
そっと瞼を閉じて、居ると信じる神に願う。
“どうか解放してくれ”と―――
アンタはこんなオレを見てどう思う?
オレはもう―――
アンタと一緒に居る夢を見るのは止めた。
これからは自分の道を歩く。
アンタの傍は辛過ぎるから。
約束してくれ。
もうオレを捕まえないと。
この“最後のフレーズ”をオレも本気で願うから。
『君に幸アレ』