● 09'Valentine B
あんまりヴァンが大声で笑うものだから通りを歩く人々が不思議そうにこちらを見ていく事に気付いて、カイツは慌ててヴァンの肩を揺さ振る。
「ヴァン兄!
何がそんなに可笑しいんだよぅ!」
ヴァンは笑い過ぎて目の端に溜まった涙を徐に拭うとカイツの方を向いて言った。
「だって、そんな事だと思わなかったから。」
「『そんな事』って…これは一大事だよ?!」
切羽詰まった様な表情でカイツはヴァンの思考が本気で理解出来ずにいた。
しかしヴァンは相変わらずあっけらかんとした表情のままこう告げた。
「男としては名誉な事じゃん。
女の子からチョコ貰うの。」
このヴァンの言葉に対してカイツは直ぐさま反論する。
「それは“普通の”女の子ならでしょ?!
ヴァン兄、パン姉の料理の下手さ知らない訳じゃないでしょ!!」