● 09'Valentine A
カイツの呼吸がある程度整ったところでヴァンは尋ねる。
「何があったんだよ?」
これ以上不安にさせない様、あくまで平静を装って何時も通りに軽く尋ねたが、カイツは今にも泣きそうな顔をしてヴァンを見詰める。
何処か憐れみの情が浮かんでる様に見えた。
「ヴァン兄…ぼく、ぼく、聞いちゃったんだ!」
悲しそうな顔をするだけで中々その続きを話そうとしないカイツを見てヴァンは疑問符を浮かべるばかりである。
少し息を調えた後、カイツは思い切ってこう述べた。
「パン姉がヴァン兄に手作りバレンタインチョコを贈るって!!」
ぽかんとしたままのヴァンを、真剣な目でカイツは見詰めている。
暫しの沈黙………
ぷっ、とヴァンは吹き出すと腹を抱えて笑い出した。
その様子を見て今度はカイツがぽかんとした表情になる。