轢かれたはずだ。
確かに
あの衝撃はこの体が覚えてる。
なのになぜ?
「なんで、生きてんの…?」
冷たい土の感覚に目を覚ますと、ざあと風が木を揺らし森が鳴いている。
辺りはもうすっかり暗くなっていて急いで周りを見渡すと、他の三人も地面に倒れていた。
よかった、四人とも一緒で。
そこはなんの変哲もない、ただの森で、
ただ私たちを除いては
だって、あのとき確かに轢かれたはずであるのに何故無傷で転がっているんだ。何故、ここにいるんだ。
「うぇ…」
「獅龍?」
「う、あ、緋漣?」
獅龍が目を覚まして、安堵。
なんかとりあえず酷く安心した。
あぁ、私、怖かったんだなぁ
せかいに、ひとりというかんかくが
「ここどこだよ」
「知らない。知ってたら、もうここになんていないよ」
獅龍が起き上がる手伝いをしてやる。余計なお世話だという目をしてたけど、手を差し伸べたらそっとその手をとってくれた
素直じゃないやつ
まあ、人のこと言えないけれど
「で…森?」
「みたいね」
「困ったなぁ。樹海だったらどうするよ」
「大丈夫だよぉ。ここは並盛神社の一部だから」
背後に気配
びっくりした。
今まで全然気配なんて感じなかったのに!
振りかえると、そこには
「…がい、じん?」
月の光りを浴びてきらきらと輝く金髪
透き通るように滑らかな白い肌
燃える赤に少しだけ闇を与えたような瞳
けれど、声はテノールとバスの間のような心地のよい低音で
「こんにちは緋漣、獅龍」
名を呼ばれた
「初めまして来夏です。これから長い付き合いになるよ」
夏が来る頃、貴方に逢えたら
(初夏の憂いを帯びた青年)