「ただ単に、好きだっただけなんです」


「……うん。知ってる」



机の上に突っ伏して、おそらく泣いているであろうなまえ
それを前の椅子から慰めているオレ

誰もいない放課後の教室での失恋は青春の一ページなんだろうが、生憎そう言って笑うこともできない
何年か経てば、笑い話になる苦い恋も



今はただ、辛いだけなんだ




「馬鹿ですなぁ…私」


「なんでだよ。アイツが馬鹿なんだ」


なまえのこと、ふるなんて



そう言うと、彼女は少し腫れた目を細めて、少し鼻声になった声で言う



アンタは、優しいね



その笑顔にオレは、胸が痛んだ


あぁ、オレなら、そんな思いはさせないよ
ずっと大事にするんだよ
毎日、好きって言ったげる



だから






オレにすればいいのに






心の中で、すらすらと言う。口には出せない癖にね
言ったら君はどんな顔をするのかな

それを想像するのが怖いくらい、臆病者なオレは


やっぱりダメツナだ




「私、ツナと友達で本当に良かった」


アンタ、きっと絶対イイ男になるよね
君は、目尻を拭いながら笑って言う



「…ありがと」



結局、ずーっとずっと何年も前から






オレが君にずっと持っている、この感情を




  
(君が知ることはないんだね)

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