夜、就寝のためにベッドに潜り込むも中々眠れずに一晩を明かしてしまう日々がしばらく続いている。

そんなとき考えるのは決まって円堂くんのことだった。今何してるんだろう。もう寝ちゃったかな。それともサッカーのこととか考えてるのかな。そのなかに、ちょっとでも俺は居るのかな。円堂くん円堂くん、守。

もぞもぞと寝返りをうっても瞼を下ろしても脳裏に焼き付いたオレンジ色のバンダナが消えることはなく、グランドの匂いとサッカーボールの転がる音とが鮮明さを増す度にドクドクと煩い心臓が勢い良く跳ね上がる。チリチリと痛む。


キャプテンとしてチームを纏める円堂くんは、たくさんの人たちから好意を寄せられている。俺だって円堂くんが大好きだ。だけど最近はちょっとおかしくなってしまった。
円堂くんの笑顔はきらきらと輝いているようで幾らでも見ていたいと思っているのに、俺以外の誰かにそれを向けている瞬間に限り、涙交じりに込み上げてくるどろどろの激情に任せて強くボールを蹴りつけてしまいたい感覚にかられる。壁を力任せに殴ったり、大きな声で叫びたくなる。どろどろが俺の中を駆け巡り身体中いっぱいに満たされて、身動きがひどく困難であるかのような錯覚を覚える。

このどろどろは、きっと俺の恋だ。汚くて馬鹿みたいな、みっともない俺の恋。
風丸くんみたいに幼なじみだったら、豪炎寺くんみたいに立派な選手だったら、鬼道くんみたいに信頼できる人間だったらよかったのに。どうしようもないことを本気で悔やみながら、シーツを濡らす自分の涙をどこか冷めた目で自嘲しているような俺を彼は一体どう思うのだろう。嫌われたくないと叫ぶ自衛心に蓋をしては仕方ないと嘆息するのを、もう何度繰り返したことか。



「………あ、」

分厚いカーテンの向こうから朝日が射し込んできた。ああ、今日も朝が来てしまった。言い様のない高鳴りと焦げ付くような憂鬱感とを抱えて、今日も俺は君の前で必死に笑うのだ。





大好きだよ、円堂くん
いつか俺は君に向かって言えるだろうか


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テーマ「人外ファンタジー」
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