ヒロトはいつもキスをするとき、目を細めてしまう。ぱっちりと美しいマスカットの飴玉のような目玉が瞼の奥に遠ざかると、何故だか寂しくなる。とても綺麗な目なのだ。目尻がきゅっと上に向いた猫みたいな目の中にグリーンのきらきらした虹彩がはまりこんでいて、二つ並んだそれを輝かせながらヒロトに名前を呼ばれるのが好きだというのに、ヒロトはいつも目を細めてしまう。キスをする直前のまま両手でヒロトの口を遮りながらどうして?と尋ねると、ヒロトはちょっとだけ不満気に眉を寄せながらぺろりと舌を伸ばした。唾液の乗った赤い舌が手のひらを舐める。驚いて思わず手を退けると、眉間にしわを寄せて目を細めた人相の悪い顔でぼそりと呟いた。
「目が悪いんだ」
「え、そうなの?」
「うん。暗いところで本読んだりしたからね」
「眼鏡かけたりしないのか?」
「別に生活で困ることもないし。眼鏡は逆に目が疲れるんだよね」
「へえ」
「でも、円堂くんの顔は良く見たいから」
そう言ってヒロトは溢すように破顔した。眉間を緩めて、至近距離で微笑まれる。お互いの息遣いさえ肌に感じる程の距離に近づいてなお、ヒロトは目を細めて俺をじっと見つめる。つられて見つめ返す。ちゅう、とキスをされた。
「マウストゥーマウス」
「ごめん、英語わかんないや。ネズミ?」
「円堂くんはネズミでも可愛いんだろうなあ」
「え?じゃあヒロトもネズミ?」
「いいよ。ちゅーちゅー、って」
円堂くんのことかじっちゃう、と小さく笑いながらあちこちにキスするヒロトが「マウスって唇のことだよ」とわざとらしく囁くものだから、今更ながらほっぺたがじわじわと熱くなってきた。







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