暖かな日曜日、近くの水族館の館内は寒々しい。だけどフィディオによって繋がれた右手を見る度に幸せを感じている。フィディオの左手は温かいのだ。
しばらく熱帯魚やイルカを見たりして時間をつぶし、それから水族館の近くにある喫茶店に入った。俺はアイスミルクティー、フィディオはコーヒーを頼んだ。俺が氷を掻き混ぜながら飲んでいると、フィディオが嬉しそうに微笑みながら俺を見つめていた。
「なんだよ、フィディオ」
「別に。ただ可愛いなあと思ってさ」
フィディオはこういうことを恥ずかしげもなく言う。何だか俺ばっかり余裕がないみたいで悔しいけど、やっぱりかっこいいんだから仕方ない。
喫茶店を出て、また手を繋ぎながら海辺まで散歩した。気づけばもう夕方だ。オレンジ色にきらきらと光る海に少し冷たい潮風が心地好い。周りには誰もいない。繋がれたフィディオの指先に少し力が入った。
「ねえマモル、キスしてもいい?」
「な…なんでいきなり」
「周り、誰もいないしさ。な、いいだろ?」
俺が返事をする前にフィディオの唇が俺のそれに重なった。唇は少し乾燥していたけれど、それでもフィディオのキスは優しかった。絵に描いたような光景に素敵な恋人。俺はやっぱり幸せを感じた。