毎日、歯を磨いて明かりを消して布団に入っておやすみなさいと呟くでしょう?真っ暗な部屋で人知れずそっとまぶたを閉じたその後、俺はいつも夢を見る。大体同じ、ぽつんと独り佇んで、円堂くん大好きだよと叫ぶ夢だった。夢の中の円堂くんは昼間のグラウンドで見せる大陽のような笑顔とは違うただ優しい微笑みを浮かべていて、それがまたいとおしくて、大好きで、ああ生まれてきて良かった、今まで生きてきた意味はここにあったんだとすら思えて、だけど俺はいつも胃の中からせりあがってくるものと闘っていたせいでそれを伝えられずにいた。惨めだ、と思い始めたのは夢を見始めて3週間目のこと。もう嫌だと思い始めたのはつい最近。初めの頃は夢でさえ円堂くんに会えることが嬉しかったのに、まさか本当にそれだけだったなんて。がっかりだ。残念だ。失望だ。声にした言葉もしてない言葉も、ぽーんぽーんと形を作ってどこかへと跳ねて行く。夢の中というのはなんとも不思議な空間で、言葉は形になってボールのように跳ね回り感情はまあるく固められて心の端からぽろりと落ちるのだった。視覚化された俺の感情たちは思いの外澄んだ色で、ころころ動く様は昔お日さま園で幼い俺が大事にしていたビー玉とよく似ていると思った。

夢の中に誰かが出てくるのはその人に好かれているから。なんて、冗談じゃない。じゃあ円堂くんは俺のことを好きだと言うのか、愛してくれるというのか。そんなわけない。だって円堂くんは×××のことが好きなんだ。そして×××も円堂くんのことが好きなんだって。つまり二人は両想いなんだよね、恋人同士になるんでしょう?本当に良かったね、幸せそうだね、まあ俺は全然祝福できないけどさ。する気も無いし。全然無い、欠片たりとて無いね。いや、正直言っていい?×××なんて早く死んじゃえばいいと思うよ、俺。現実問題として円堂くんに嫌われるから絶対言わないけど、ここ俺の夢の中だし別に構わないよね。いえす、びーふりーひあ!愉快痛快!両手を広げて叫ぶ俺の目の前で声は固まってぽろぽろ落ちて跳ねて回ってつつくと崩れて、まったくこいつら一体何がしたいんだよ。人の意思を無視ばっかして棒立ちで悩む俺が馬鹿みたいじゃないか。こんな俺もこの夢も、本当は×××への嫉妬に燃え狂ってるくせに円堂くんの恋愛相談に毎日付き合っちゃう基山ヒロトとおんなじくらい、馬鹿馬鹿しくて無意味じゃないか。
ああもう、苛々する。俺、報われなさすぎでしょ。





ちくしょうと叫んで生まれたボールが点々と落ちた涙を吸って肥大化して、足元で所在無さげに転がったそれをあらん限りの力で、踏みつけ、た!


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -