映画を見た。フィディオが面白いと言ってたイタリアの作品。字幕も吹き替えもなしの、フィディオが見たのと同じ状態で見ようとしたら全然理解できなかった。だけどラストで泣いた。果たして映画への感情移入と言語のぶ厚い壁、どちらが俺の涙腺を壊したのだろう。

「どうしたのマモル、泣かないで」

苦笑いしながら涙を掬ってゆくフィディオの指は白く美しい。対する俺の頬は黄味がかり日に焼けたみっともない肌に覆われ、ほこりでも被ったかのようだった。俺とフィディオはこんなにも違う。だけどみじめになりながらもあやすように涙を拭う指先にすりよってしまうのは、ふりかかったほこりをとり払ってしまう魔法の呪文をフィディオが唱えてくれるからなのだ。

「マモル、愛してる。愛してる。」

髪に口元を埋めて愛おしむかのように優しく囁いた彼は、豪華なお城に住んだりしないし、宝石や金銀に囲まれているよりはグラウンドで泥にまみれている方がよっぽど彼らしい。ちょっと涙脆くて料理もサッカーもできるフィディオは、決して王子様なんかじゃない。でもそれで良い。どうしたってシンデレラなんかにはなれない俺を抱きしめるのは、王子様でなく魔法使いで充分なのだ。


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