「ねえ、まもる。俺のこと好き?」
「うん!ヒロくん大好き!」
「どれくらい?」
「サッカーとおなじくらいかなあ」
「それじゃ嫌だよ、俺が一番じゃないと」
「じゃあ一番ね!ヒロくんが一番好き!」
「ほんとう?嬉しい、俺もまもるが一番大好きだよ」
「じゃあ結婚だね!」
「結婚?」
「母ちゃんが一番好きな人とするって言ってた」
「じゃあ、俺とまもるは結婚できるね」
「うん!大事にしてね、ヒロくん」
「勿論だよ、俺の大事なお嫁さんなんだから。まもる、俺たちずうっと一緒だよ」
「うん、ずうっと一緒ね!」


「…っていう約束をしたんだ」
「ごめん、それ何時の話?」
「六歳のとき」
「即答するな気持ち悪い。夢とかじゃないのか?」
「酷いなあ、れっきとした事実だよ」
「でも子供の頃の口約束だろ、夢オチと良い勝負だぞ。」
「やっぱりそうなのかなあ…」

小さい頃彼女と交わした約束が一言一句違えず鮮明に思い出せる。あの頃と今とで、一体何が変わったというのだろう。俺は守が好きだし、守も俺が好き。そう言えば「俺のこと、好き?」と質問したときの守の赤面っぷりは可愛かったなあと呟いたら、正面に座る緑川に髪を引っ張られた。「のろけんな馬鹿、まじ死ね」「羨ましいだろ」無言で足を踏み潰された。


「守、帰ろう」
放課後になると俺は毎日、隣のクラスへ守を迎えに行く。うん、と立ち上がった守と他愛もない話をして、校門を出て2つ目の角を曲がったあたりで手を繋ぐ。俺より幾分か小さくなった手のひらは、今も昔も暖かいままだ。
中学、高校と守と同じ学校に通い、ずっと守の傍にいた。約束を切り出した身である以上、早々に破るわけにはいかないのだ。例え守が忘れてしまっていても。ちなみに、俺はもう一度守にヒロくんと呼ばれたら死ねる自信がある。死因はきっと守によるキュン死。そしてそんな死に方をしたら多分幸せ過ぎてもう一度死ねる。守との毎日はデンジャラスなのだ。

「なあヒロト、ほんとに良かったのか?ヒロトなら推薦でももっと頭の良い所行けるのに」
「いいんだ、俺は守の居るところがいいから」
彼女の頬が赤く染め上がった。夕日のせいだなんてベタなごまかしは効かない、まだ太陽は頭上で白く燃えている。彼女の可愛い耳たぶを見下ろしながら、俺まで顔が熱くなってきた。血色が悪いとよく言われる俺の顔に、身体中に、どくどくと音を立てて血を巡らすのはいつだって変わらず守だけだ。

「そういやヒロト、何か言いたいことがあるって聞いたんだけど」
「え、ちょっと、誰に」
「緑川」
あのことわざ野郎今度はっ倒す。
「何だよ、言いたいことって」
「うーん、と…。どうしても、言わなきゃ駄目?」
「言えよ、気になるじゃん」
「言わせて頂きます」
しまった、守が不服そうに頬を膨らますせいで思わず口が。なんて破壊力なんだ。流石守、恐るべし。
早く言えよと守が催促してくる。うわあ写メりたい、じゃない。本気で言わなきゃいけない雰囲気だ、どうしよう。俺の気持ち、守にちゃんと伝えなきゃ。まずは落ち着け、俺。深く息を吐いて、吸う。震える手で意味もなく頬をかく。やばい。これは、かなり。
想定以上に緊張している自分がいっそ滑稽だ。どうにも口元が空回りしている気がしてならない。ぱくぱく。すうはあ。落ち着け、俺。頑張るんだ。


「ねえ、守。」
「ん?」
「結婚しない?」


…あ、間違えた。一緒に暮らさない?って聞くつもりだったのに。
でも守が幸せそうに頷いてくれたし、もういいや。お陰様で俺も大変幸せです。ありがとう緑川、もうはっ倒すとか言わないよ!


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