ヒロトは裏表の激しい人間だ。
ヒロトはいつもにこやかにいけしゃあしゃあと嘘ばかりついていて、だけど俺の前では一度も嘘をついたことはない。約束を破ったこともない。君が好きだから、とヒロトは言う。ヒロトは嘘つきで、だけど俺のことが好きで、だから嘘はつかないのだと言う。なんだそれ、と思う。俺の前で嘘をつかなければ、俺がお前のことを好きになると思っているのだろうか。結局お前が嘘つきであることに変わりはないというのに。しかしヒロトは言う。そうじゃないんだ円堂くん、ただ俺は好きな子に嘘をつきたくないだけだよ。なんだそれ、と思う。なんだそれ。ヒロトの価値観は酷く難解なのだ。嘘つきだから、紆余曲折してねじり曲がりくねくねと湾曲している。端から見ればどこから何が出てくるのか予想できないブラックボックスだ。

今この瞬間すら訳がわからないにも関わらず、俺を真っ直ぐ見据えてヒロトは言う。


「心外だな、裏表のある人間だなんて」
「違うのか?」
「うん、違うよ。」
「どこが。嘘つきで、コロコロ態度変えるくせに」
「それでもね、円堂くん。俺が君に向ける好きは、そんな薄っぺらいものなんかじゃないんだよ。俺は、君のいう裏でも君が好きだし、表でもやっぱり君が好きだし、奥行きでも高さでも厚みでも、どの面だって君が好きなことに変わりはなくて、それってつまり、とても立体的な愛なんだ。だから、俺が君のことを好きである以上、俺は裏と表だけの平べったい人間にはなれないんだよ。」


ヒロトは言う。
俺にあつみを与えてくれてありがとうと、とても幸せそうに笑って言う。


目の前で微笑むヒロトはなるほど、確かに立体だった。


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