あれから、何だか記憶が曖昧だ。何を話したか、どうやって帰ったか、全然覚えてない。そして、気付いたら学校にいた。
「に…仁王君、これ…食べてくださいっ!」
今日は、雅治の周りがいつもより騒がしい気がする。何でだろ…(ていうか雅治は、何でいつもうちのクラス来てるんだろ)。
「いつもいつも…勇気あるわねえ」
「そだねー。なんかさ、今日いつもより騒がしくない?」
疑問をぶつけてみると彼女は首を傾げて、そう?と言った。観察力がある彼女のことだ。きっといつもとそう変わらないんだろう。変わったのは…私か。自分自身を嘲笑った。

「名前、…名前!」
「な、何?」
「ちょっと話そうぜ」


「どうかした?ブン太」
私をここ…屋上に連れて来たのは、ブン太だ。ちなみにブン太、名前…と、お互い名前で呼びはじめたのは、あの日由良達を待っていた時からだ。
「あの時の続き聞こうと思って…さ!」
丸井は、タンクみたいなのに上がりながら言った。私も上がろうかと考えていると、上から丸井が手を差し延べてきて、その手に掴まって上に上がった。丸井の株が急上昇した。
それにしても…あの時は、また今度聞いてくれる?と言ったけど、本当に聞いてくれるなんて思わなかった。丸井ってすごく優しいんだろうな、とか考えてたら丸井になら何でも話せる気がして、私は全部話すことにした。

始終真剣にブン太は聞いてくれて、時々相槌とかも打ってくれた。なんだかブン太の優しさとか色々考えてたら、目の前が歪んだ。そして、それと同時にブン太に抱きしめられた。
「私、雅治が好き」
「うん」
「大好きなの…っ」
ブン太に抱きしめられた瞬間、雅治への気持ちが涙と一緒に零れ出た。ブン太は、私が落ち着くまで抱きしめてくれていた。



制御
(雅治が、)(好き)

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