お風呂から私が上がると、雅治は寝ていた。それに何だか安心したような寂しいような…よく分からない気持ちになったけど、私はあまり気にしないようにして、雅治に毛布をかけて、私は自分の部屋で寝ることにした…んだけど結局寝れないでいた。そんなときに、ドアが開く音がした。…家には、雅治と私しかいないから…雅治?
「寝とるんか…?」
この声は雅治だ。だけど…私は雅治に、何故か起きてると言えなかった。すっかり狸寝入り状態だ。
だから雅治が出ていくのを待っていると、唇に温かい感触のものが触れた。
私の頭はフリーズした。その間に足音は遠ざかって、ドアを閉める音がしたから、雅治はもういないと思う。

※少々お待ち下さい。

暫く経つと、やっと頭が働いてきた。今、雅治に、キス、された。分かると同時に混乱した。何で雅治はキスしたんだろう とか、私達は幼馴染みじゃないの とか。
ふと昔を思い出した。そしてやっぱり思うのだ。幼馴染みで両想いになるはずない…だって幼馴染みだもの。
きっと雅治はお年頃で、私だけにしてるわけじゃないんだ。何だか悲しかったけど、私はこう思い込んで、気にせず寝ることにした。


「名前」
「何?」
「朝飯はまだかのぅ」
「今作るー」
昨日のことがあったのに、雅治はいつもと何ら変わりなかった。ああ、やっぱりいつもこんなこと…してるんだ。考えると、やっぱり悲しかった。


「名前おっはー!」
「おっはー!」
私が教室に入ったら友達がすぐ挨拶してくれた。でも、何だか雰囲気がピンクな気がする。恋愛話的なものでもやってたのか?
「ねえ聞いてよ名前〜」
「何々、どうしたの?」
「この子、仁王君に告るんだってえ〜!勇者だよね〜」
そう言って友達が指差したのは、私の親友の由良だった。
「も…もう!そんな大声で言わなくたって…。って名前?どうかしたの??」
「うぇ…っな、何でもないよ!……へー…こ、告るんだ〜」
「…うん」
「そ、そんな顔しないで!絶対大丈夫だよ!由良、可愛いし!!協力するから!」
「ほんと…?」
「勿論だよ!」
つい勢いで協力するって言ってしまった。…そこで、おかしな点に気付く。つい。親友の恋に協力するのは、私にとっては嬉しいはずだ。それには、つい、が不適切だ。それに、由良が雅治に告白するって聞いたとき、雅治がオッケーしたらどうしようとも思った。
私は、窓の外の空を見て、親友失格だと思った。
そんなことを考えている私を、心配そうな目で見つめている人がいるなんて、知らなかった。


そして時間が止まるはずもなく、放課後になった。今日の放課後は、私の親友由良のために恋のキューピッドにならなきゃいけない。普段なら、親友のためになるなら喜んですることだけれど、今日は違う。放課後なんて来なかったらいいのに、と思ったし、とにかく憂鬱だった。しかし、親友の頼みを断るなんてことは出来ない。でも考えてみれば、断る理由なんてない。私は雅治のこと好きなわけじゃないんだから。



拒む
(幼馴染み)(これ以上これ以下の感情はない、と思いたい)

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