水谷のディープキス以来、私は敬語を止めた。止めざるをえないと思う。あと、みず…文貴の扱いも前より気を付けるようになった。水谷から文貴に変えてと言われたりもしたから、変えた。もうあれの二の舞にはなりたくないから。

「やあやあ」
「あ?…名前じゃん」
誰かに話を聞いてもらいたかった私は、幼なじみのクラスに訪ねた。私のクラスに孝介が来たときは、いつも文貴がいるから文貴の話は出来ないんだよね。
「あ、ちょっと孝介借りるね」
「いいよー」
孝介と一緒にいた友達に一言そう言って、孝介を連れて屋上に行った。でも残念ながら屋上は開いてなかったから、扉の前での話になった。

「孝介」
「ん?」
「文貴がさあ…」
全部話した。なんかもう気恥ずかしさというものはなくて、とにかく話したかった。話したら、孝介はちょっと顔を歪ませた。
「お前は気にすんな」
一言だけ私にそう言って、孝介はどこかに行った。いつもの孝介とどこか違ったけど、私は特に気にせず教室へ戻った。


孝介の、お前は気にすんな発言から数日が経つ。おかしい、絶対何かがおかしい。私がそう考えるのも無理はないと思う。だって、いつも鬱陶しいぐらいベタベタしてきた文貴が私の前に現れないのだ。同じクラスだから顔を合わせることはあるけど、文貴は私を避けるのだ。それはもうムカつく程に。一体何なんだろう水谷文貴。転校初日からベタベタしてきたと思ったら、急に避ける。よく分からないけどすっごいムカつく。


「忘れ物〜。…あ…」
みんなが帰った後も、苛立っていた私は帰らずに教室にいた。教室はなんとなく落ち着くからだ。そんなときに私の苛立っている元凶とも言えるヤツが、教室に現れた。私の顔を見た途端固まるものだから、私は余計に苛立った。
「文貴。あんた何がしたいの。なんで私を避けるの」
我慢出来ずにそう言うと、文貴は俯いた。
「いきなり文貴が話しかけてこなくなるから、こっちは気になって仕方ないんだけど。」
文貴は顔を上げた。すっごい驚いた顔だ。まさに驚愕。でも段々といつもの文貴の表情に戻っていって、こっちにニヤニヤしながら近付いてきた。
「な、なに」
ニヤニヤ
「なんなの!」
「寂しかった?」
「!」
「寂しかったんだあ…」
ニヤニヤしながらそう言ってくる水谷に、なぜか反論出来なくて顔に熱が集まっていく。「大丈夫!もうしないからー」べたべた



大人しいとなんだか寂しいです
(と、思ったけど気のせいだったみたい!)(でも寒くなってきたから…これもいいかな、なんて)





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