2012/09/07 * 0
夢をみた。
夢を、みていた。
寝ているときに見る夢ではなく、俺様は、夢をみていた。
物心ついたときにはもう忍のさとにいて、かすがや歳の近いやつらと死にそうになりながら修業をしていた。
幼心にこの辛い修業をやりこなせばいつか親が迎えに来るのではないのかと、この修業が終われば自由になるのではないかと。
俺様は、きっと家族に憧れていた。
武士に、いや、農民としてこの人生を終わらせたかった。
そんな夢をみていた。
それは歳を重ねるごとにただの枷になった。
そうなることはあり得ないと分かってしまった。だから捨てて、忘れた。
忍として生きてしばらく。
武田の大将に拾われて、また、ここが居場所で俺様が武士の身内のように扱われて。
あんたに会ってしまって。
どうしてくれる。俺様のことなんてあんたの苦手な忍の一人として一線引いてくれりゃよかったのに。
半端な優しさで人のヤケ話を真剣にきいて。
「作り話だよ、竜の右目。」
「そうに聞こえねぇな。」
「本当だとしても関係がないでしょうよ」
「要は寂しかったんだろう。お前」
「人の話を聞いてくれる?」
「ああ、話せ。詳しく。」
「……」
「俺はおまえを同じ従者として認めてるつもりなんだがな」
「……ただ、その猿は夢を見てたんだよ。群れに。」