side・………?



「まだ、見付からないのか。」

 感情を圧し殺し普段よりも低く響いた声音に、彼は背に冷たいものが流れるのを感じた。
 随分と長い間この方に仕えているが、ここまで温度の感じられない彼を見るのは久方振りだ。椅子に座り背を向けている為その表情は伺い知れないが、好好爺然とした面に影を落とし凍えるような冷たい眼をしているだろう。

「行方不明となった当日、学校から下校したという情報が得られませんでした。唐突に姿を消した状況から、現在は縦の時空軸が関わっているという線が濃厚かと。」

 声が震えぬよう、そう言い切った。
 探し人がつい先日『未来』での戦いの際に、縦の時空軸の奇跡によってハーフボンゴレリングをオリジナルの形へと変えた事実は記憶に新しい。
 そこで世界を混乱に陥れたマーレの継承者は既に監視が付いており、今回の事に関わりはないと判断されたのだ。

「あの小娘は何か吐いたか?」
「いいえ。何も知らないの一点張りで、新しい情報は得られておりません。」
「些細な事でも良い。一つ残らず、全てを引き出し終わるまで決して死なせるな。」
「はっ、承知致しました。」

 退出の許可が出され、礼を取って後ろを振り返る。銃弾の雨にも耐えきる重厚な扉に手を掛けて、静かに押し開いた。


「………何故、お前まで………。」


 扉が閉まりきる瞬間、微かに聞こえた掠れ声に耳を塞ぐ。彼の心労はきっと途方もないのだろう。ファミリーの頂点に立ち続けている彼の、久し振りに吐き出された心からの言葉だった。
 ―――きっと見付けてみせよう。彼の守護者として、彼の憂いを払う者として。

 扉の閉まる重い音が、長い廊下に静かに消えていった。




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 due-2-
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