すき、だいすき2

※ぬるいR18




ナインの壊れた腕の替えが用意できたとサイバーライフ社から連絡がきたのだが、その腕を取り付けるのに丸々1日はかかると言われてしまった。まぁ、ナインがいなくてもどうにかなるだろうということでそれを彼に言い、サイバーライフ社に行こうと促すも激しく首を横に振り拒否したため、結局その日は行くことができなかった。
そして次の日も、そのまた次の日も腕の話をする度に首を横に振り、サイバーライフ社に行くことを拒否するナインに、なぜそこまで拒否するのかと聞いても彼はしかめっ面で首を振るだけで何も答えてはくれなかった。そこまで首を振るほど嫌なものが、サイバーライフ社にはあるのだろうか。それなら拒否するのもわかる。私だって、嫌なものがあるところには行きたくはない。しかし、そうも言っていられない事情がこちらにはあるのだ。
その事情というのは、『デトロイト市警の警察がいつまで経っても片腕のアンドロイドを直そうとしない。これはアンドロイドへの虐待ではないか』というアンドロイド擁護団体からの連日に渡る抗議だ。日に日に激しくなるその抗議活動を止めるために、そしてこれは決してナインへの、アンドロイドへの虐待ではないということを証明するためにも、一刻も早く彼をサイバーライフ社に連れて行く必要がある。

ということで、いつもとは違い強めにサイバーライフ社へ行くことを言っても首を振るだけのナインに、このままだとアンドロイド愛護団体によってバディを解消されてしまうどころかこの署にすらいられなくなってしまうかもしれないことを事細かく言い、非番の前日に行ってくれれば私ひとりで捜査をすることがないこと、それを心配して今までサイバーライフ社に行くことを拒否していたのも少しはあるでしょう?ということも言うと、長い沈黙の後にこくりと彼が頷き、渋々といったかたちではあるがタクシーに乗ってくれた。
そして、着いて早々やはり行きたくないとばかりに私の腕を掴み、その場を動こうとしないナインを警備員数名と共に移動させ、社員にナインのことをよろしく頼むとぺこぺこする私の後ろに隠れていたらしい彼を安心させようと頭を撫で、むっすりとわずかながら膨れている頬を撫で、最後に抱きしめて背を撫でると、そのまま片腕でがっちりと捕らえられ、そこから約数時間、社員数名と共に彼を説得し、やっとのことで私を離して社員数名に連れられて行く彼を見送るも、心なしかしょんぼりとした顔でずっとこちらを見ていた彼に胸を痛めたが、何とか無事にナインをサイバーライフ社にお願いすることができた。
ここ数か月の間ナインとは常に共にいたため、寂しいどころの騒ぎではないが、これも彼のためなのだ。仕方がない。
そう自分に言い聞かせつつ、そのまま自宅に帰ったわけなのだが…。



「おかえりなさい。今日もごくろうさまです」

自宅のドアを開けると、目に飛び込んできたのは満面の笑みでこちらを見ているコナーだった。
なぜ彼がここに?今日は泊まる予定ではなかったはずでは?いや、それよりもそのひらひらとしたかわいらしいエプロンは一体何だ?この家にそんなにかわいらしいエプロンはないのだけれど、もしかしなくても自分で買ったのか?なぜ?制服の上につけているからちぐはぐなところもあって余計かわいいが、なぜそのような姿でここに…?と固まっている私におかえりと声をかけたコナーは、引き続き固まっている私をテーブルに着かせ「今温めますから、少し待っていてくださいね」と見覚えのない複数の料理を温め始めた。この家に手料理などというものはないはずなのだが、一体どこから…。
頭の中をクエスチョンマークでいっぱいにしているうちに「はい、どうぞ。冷めないうちに召し上がれ」と出された数々の料理を前にして思わずいただきますと口に運べば、それらは皆おいしくてこれまた思わずおいしいとこぼしてしまう。すると「本当ですか?よかった…あなたのお口にあって」と向かいに座るコナーが嬉しそうにはにかむ。
あぁ、そうか。この見た目も味も完璧な数々の料理はコナーが作ったもので、それらを作るために自分のエプロンを用意したのか。そういうことだったのか。

「RK900が今日サイバーライフ社に預けられると聞いて、いてもたってもいられなくて。ほら、あなたは寂しがりだから」

コナーお手製の料理を食べながら、なぜここに?ということを聞くと、私のことを思ってここまできてくれたことをにこにこと話すコナー。
ちなみに、なぜ料理を?という私の問いに対して彼は「ハンクが「腹がいっぱいになりゃ、大抵のことがどうでもよくなる」と言っていたので。それなら僕の手料理でRK900のことについてどうでもよくなってもらおうと思いまして」と得意げな顔をしていてかわいい。
…いや、それは置いておくとして、ナインがいなくて寂しく思う私のことをちゃんと理解してくれているだけでなく、こうしてここまできて料理まで振舞ってくれる彼の優しさが私の涙腺を刺激する。
だけど、ここで泣けば彼があわあわと慌ててしまうことは目に見えている。なので、じわじわと視界を歪ませていく涙をなんとかしようとしている私に「ど、どうしました?どこか痛いところでも?」とこめかみをぐるぐると真っ赤に染め、椅子を豪快に倒しながら立ち上がるコナーを見て、涙が目に溜まるだけでも彼はこんなにも慌ててしまうのかと頭を抱える。これではあくびをしただけでもこうなってしまうのではないだろうか。
もうコナーの前ではあくびもできないと思っている私の傍らに膝をつき、「どこですか?どこが痛いんですか?」と心配そうに見上げる彼はまるで飼い主を心配する犬のようで大変かわいらしい。そんな彼にどこも痛くないと首を振ると「では、なぜ……あぁ、そうか。RK900のことを思い出してしまい、寂しくなってしまったんですね」と納得した様子で立ち上がり、別に今ナインのことは思い出していないことを言う前に私の頭を撫で始めた。
「大丈夫、僕がいますよ」と言うコナーの手付きは、まるで壊れ物を扱うように優しく繊細で、何だかくすぐったい。

本当なら勘違いしているコナーにそのことを伝えるべきなのだろうが、誰かに頭を撫でてもらう機会が滅多にない環境にいるため、つい思う存分頭を撫でてもらってしまった。しかも「まだ寂しいようでしたら、ハグもしますが…どうです?寂しい?」と言う彼の言葉に甘えてハグまでしてもらってしまった。
まさか私がハグを所望するとは思っていなかったのだろう。パッとその場で立ち上がり、ハグをしてもらおうと腕を広げる私を見たコナーは最初こそ目を丸くして驚いていたが、腕を微かに揺らしてハグしてくれと催促すると口の端をむずむずと上げ、勢いよく私を抱きしめてくれ、長いこと私の背を撫でたり、首や耳などに唇を寄せ、そっとキスをしてくれたのだ。
いつもなら私がすることをコナーがしているのが何だかおかしくて、途中からふふっと笑ってしまったのだが、それに対して「ん?くすぐったい…?」と耳元で優しく囁くものだから、背筋がゾクゾクと……いや、これ以上はいけない。いろんな意味で。

「もういいんですか?本当に…?」

いろいろとまずいことになりそうだったので、もう大丈夫だとコナーの背を優しく叩いて離すように促すと、不満そうな声色ながらも私を離してくれた彼の頬はやはり不満そうに膨らんでいて、とてもかわいらしい。
その頬を指で押し、柔らかさを堪能してから本当にもう大丈夫だということと、甘えさせてくれてありがとうということを言うも「いえ…あなたの寂しさが消えたのならそれでいいです」と、なぜかまだ不満そうにしているコナーに戸惑ってしまう。一体どうしたのだろうか。何がそんなに不満なのだろう。
今度はぷくりと膨れた頬を手で包み、どうしてそんな顔をしているのかをゆっくりと撫でながら聞くと「……もっと、僕に甘えてほしいんです」とこぼすコナー。もしかしたら、私が甘えたことによって甘えられる喜びを知ったのかもしれない。それで、もっと甘えてほしいのに私がもういいなどと言うものだから、甘えられ足りないと頬を膨らませているのか。あぁ、なんてかわいいのだろう。
自分もコナーに頭を撫でてと甘えられるようになって改めて甘えられる喜びを知ったので、彼の気持ちがよくわかる。それに、誰かに甘えるという行為を久々にして、甘えられる喜びにくわえて甘える喜びも改めて知ってしまったので、彼が私に甘えてほしいと言うのなら彼が望んでいることをしてあげたい。…いや、させてほしい。
むすりとし続けているコナーに、じゃあもっと甘えさせてもらおうかなと言った途端「本当ですか!」と目を輝かせる彼がかわいくて仕方がないが、ここで彼の頭や頬を撫でてしまうと私が彼を甘やかすことになってしまうためできない。だけど、かわいいのだ。「では、次は…次は…どうしよう、あなたは僕に何をしてほしいですか?」と嬉しそうに首を傾げる彼が、本当にかわいいのだ。かわいくてかわいくて仕方がないのである…。



あの後は、私ではなくコナーがしたいと思うことをしてもいいということを言うも「僕がしたいこと…」とLEDをぐるぐると黄色く染める彼が心配になり、とりあえずコナーの手料理をもっと堪能したいと主張し、「そうですね!では、あなたが僕の料理を堪能する間に僕があなたにしたいことを考えますね」とこめかみを青く戻すことに成功。
そして、彼の料理をおいしいおいしいと食べる私の頭をよしよしと嬉しそうに撫で続けたコナーは、「後片付けは僕がしますからシャワーを浴びてきてください。その間に僕があなたにしたいことを考えます」と言い、先ほどの頭なでなでは彼が本当にしたかったことではなかったのかと私を驚かせたのだが、まぁ今まで甘える側だったわけだし、そうすぐに相手を甘やかす方法なんて思いつかないだろうということで、彼の言葉に甘えてシャワーを浴び、「髪の毛、乾かしますね」とドライヤー片手に現れた彼に髪を乾かしてもらった後、そっと私を抱きしめる彼に身をゆだね、「もう少し待ってくださいね」とぽそりと呟く彼に、こうして私を抱きしめることも彼にとっては本当にしたいことではないのかと再度驚いてしまった。

コナーが本当にしたいことは何なのだろうか。彼自身、自分の望みがわからないようで長いこと考えているが、私に甘えてほしいというのが本来の望みであり、そこから先のことはまだ考えられない状態にあるのかもしれない。そうなると、現時点ではいくら考えても答えは出てこないということになるわけで……いや、というか単に私が彼に甘えればそれで済む話なのでは?それなのに、コナーの好きなようにしていいという甘える側とは思えない発言のせいで、甘やかす側にもかかわらず甘やかされるようなことを言われて混乱しているのでは…?
甘えることに慣れてないせいで無意識にコナーを甘やかすようなことを言ってしまったことに気付き、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。これは早いとこ彼に甘えつつ、混乱させたことを詫びないと。



そっと私を抱きしめているコナーに急いで擦りついて甘えると、その行為に驚いたのかびくりと身体を震わせたコナーも次第に慣れていき、「もっと…もっと僕に甘えてください…」と力強く抱きしめるほどになり、しばらくの間そのまま甘え倒していると「…そろそろベッドに行きましょうか」と抱えられ、ふわふわとベッドへ。
ころりと丁寧にベッドに寝かされ、「少々お待ちを」と言うコナーは制服の上下を脱ぎ、それらを壁にかけてから、「おっと、忘れてた」と明かりをベッドランプのみに切り替えて私の隣にころんと寝転がり、枕を押し出すように器用に私の首の下に腕を差し入れた。
こうしてベッドに横になる時は制服を脱がないと皺になってしまうということを、ナインが初めてこのベッドでスリープモードになった翌日にしっかり学習しているからこそ、彼はこうしてちゃんと制服を脱いでからベッドにころんとしたのである。はい、偉い。
しかし、本当ならワイシャツも皺になってしまうので脱いだほうがいいのだが、さすがに上半身裸の下着姿のコナーに腕枕をされて安眠できる気がしないので、申し訳ないが着たままでいてもらっている。まぁ、今のワイシャツ&下着姿でもいろいろとあれなのだけれど。

「あの…明日は非番ですよね?もしよければ、これから僕と夜更かしをしませんか?」

いつもは制服を脱いだ時に一緒に外すネクタイを外し忘れていることに気付き、片腕が使えない状態の彼の代わりにそのネクタイを外している時に発せられた言葉があまりにもかわいくて思わず即OKしてしまったのだけれど、彼の言う夜更かしとは一体どのようなものなのだろうか。夜通しいろんなことを話すとかだろうか。それとも、引き続き私が彼に甘え倒すというものなのだろうか。
そういえばコナーに甘えることは現在進行形でしているけれど、私が無意識に言ってしまった甘やかす言葉についてまだ詫びていないな…と、外したネクタイを押し出された枕の上に置いていると、「では、夜更かしをする前に数問ほど質問をさせていただきますね」と、なぜかキリッとした表情で言ってくるものだから少し笑ってしまった。夜更かしをする前にしなければならない質問とは一体何なのか。
というわけで、彼がどんな質問をしてくるのか楽しみになってきたのだが、わくわくとコナーからの質問を待つ私を彼はなぜかLEDを黄色くしながら見ている。しかも、表情も先ほどとは違い、何だか緊張しているように思える。彼は一体どんな質問を私に投げかけようとしているのだろうか。

「……あなたは、僕のことが好きですか?」

わくわくが一転、ドキドキとコナーの表情につられるように緊張している私に投げかけられた質問が、あまりにも彼の表情とは程遠い内容だったため、聞き間違いかと思い聞き直してしまった。すると「あの…僕はあなたのことが好きなのですが、あなたは…その…」と戸惑っていて、これはまずい。その質問は聞こえないし答えもしないというような空気になってしまった。早くこの空気をどうにかしないと、もう彼から質問をしてもらえなくなって夜更かしもできなくなってしまう。
徐々にしょんぼりとした表情になっていくコナーに慌てて私も好きだということを言うと「本当ですか!」と瞬時に明るい表情に戻り、元から近かった顔をさらに近付ける。そして「では、僕のことを愛していますか?」と、にっこりと笑いながら聞いてくるものだからポカンとしてしまった。この質問は一体夜更かしとどう関係があるのだろうか。
口をぽかりと開けて黙っている私を見て不安になったのだろう。先ほどと同じくしょんぼりと「…やはり、RK900のほうが…」なんて言うので、これまた慌ててコナーも同じくらい好きだと言うと「好きなだけですか?しかも、RK900と同じくらい…?」とさらにしょんぼりと子犬のような目で私を見るコナー。
…いや、そんな目で見ないでほしい…何でもしてあげたくなってしまうから…。


そんなこんなで、子犬のようにくぅんくぅんとしょんぼりしているコナーに愛していると言うも「……だけど、RK900と同じくらいなんでしょう?」とジトッとした目を向けられてしまい、さすがにナインよりも愛しているとは言えなくてもだもだしている私に「…もういいですよ、RK900と同じでも」と妥協してくれるコナーは優しい。私の一番になりたいと常々言っている彼のことだから、本当はナインより愛していると言ってほしかったのだと思う。でも、困っている私を見てナインと同じでもいいと言ってくれたのだ。これを優しいと言わずして、一体何を優しいと言うのか。
しかし、ありがとうとコナーの頬を撫でようとした手を掴まれ「唇にキスをしてくれるのなら、もう文句は言いません」と目が笑っていない笑顔でそう言う彼は、思ったほど優しくはないのかもしれない。

「ほら、ここですよ」

額や頬にはもう数えきれないくらいキスをしているが、実は唇にはまだしたことがない。別に親子間で唇にキスをしている家庭もあるし、額や頬と同じようにキスしてもいいと思ってはいるのだけれど、コナーもナインも顔がいいため、いざ唇にキスをしようとするも何だか照れてしまい唇にはできずにいたのだ。
そのことを彼に話し、だからいつものように額か頬ではダメかと聞くが、彼はぱたりとこちらを向くことを止め、天井を仰ぎながら自分の唇に指を這わせてキスをするのはここだと言って聞かない。いつもなら、ここまで困らせることはしないのに…どうしても唇にキスをしてほしいようだ。
まぁ、自主的に唇にキスをするのと相手にねだられてキスをするのとでは気持ち的にねだられたほうがキスをしやすいように思うし、そこまでしたいというのなら応えてあげるのが世の情けということで起き上がり、コナーに覆いかぶさるかたちで唇にキスをしようとしたのだけれど、彼の目が一部始終を見逃さないとでもいうように大きく見開かれていて、とてもではないがキスできる状況ではない。何だこの羞恥プレイは。
ため息をつき、一向にキスをしようとしない私に痺れを切らしたのか「まだですか?」と首を傾げ、私を見上げるコナーに目を閉じる気はないのかを聞けば「ありません」とにっこり答えてくる彼にまたため息ひとつ。
こうなったら覚悟を決めるしかない。

なんて意気込んでおきながら、コナーの目に手を乗せキスしているところが見えないようにしつつ彼の唇にそっとキスを落とし、目隠しをされてむくれる彼にキスをしたことを話す。しかし、案の定「何も感じませんでした」とぷんすかするコナーに対して、そっちがそのつもりならこっちだって容赦はしないという好戦的な気持ちが芽生えてしまったのである。
なので、頬をぱんぱんに膨らませて怒りを表現するコナーに馬乗りになり、「えっ」と驚きで目をまんまるにする彼の頬を両手で包み込み、そのまま唇めがけてキスをする。そして、また何も感じないと言われないように何度も何度も角度を変えて彼の唇を食んでは吸い、吸っては食みを繰り返し、はぷはぷと途切れ途切れ私の名を呼んでこの事態をどうにかしようとしているのであろう彼の口に舌をねじ込んだ。
舌をねじ込んだ途端びくりと身体が跳ね、そのままカチコチと固まってしまったが、コナーの舌に己の舌を絡めようと必死になっているにもかかわらず、なかなか捕まらないところをみると、舌だけは固まっていないらしい。
きっと舌の動きすら私より優秀であろうコナーの舌を追い求めるのは早々に止め、それならばと彼の両耳を塞ぎ、わざとくちゃくちゃと口内の音をたてる作戦に出る。前にこうして耳を押さえて深いキスをすると、耳を押さえられたほうはそのキスの音をよりリアルに感じて身体のほうも感じてしまうという話を聞いたことがあり、それを彼で試しているのである。
……だが、コナーはアンドロイドだ。人間には有効なこの行為も彼には効かないかもしれない。むしろ人と違い、“感じる”ということがないのかもしれない。そうなると、今していることがすべて意味のないことになるということで…。

口内をめちゃくちゃにするのを止め、恐る恐る上体を起こすとそこには目をとろりとさせて視線をふわふわと彷徨わせているコナーがいた。よかった、アンドロイドにもしっかり効いているようだ。
まるで寝ぼけているかのようにとろんとしているコナーに気をよくし、両耳を指でいじりながら彼の名を呼ぶと「んっ…はい…」と声まで蕩けたように甘くなっていることに気付き、まさかここまで効くとは思っていなかったので動揺してしまう。どうしよう、LEDも赤くなっているし確実にやりすぎた。
再び恐る恐るコナーの名を呼び、大丈夫かどうかを聞くと「はい…大丈夫です…」とふにゃふにゃ言い、耳から頬に移動させた手を上から包み込むように握り締めてくる。そして「だけど、僕の股間は大丈夫ではないようです…」とふにゃりと笑った。
……えっ、股間?

「ほら、前にアタッチメントの話題が出たでしょう…?それで、いつあなたとセックスすることになっても大丈夫なように、常に取り付けていたんですよ…」

嫌な予感しかしなかったけれど、早く見ろとばかりにふにゃっと私の名を呼ぶコナーに意を決して後ろを振り向き彼の股間を見ると、下着姿でもわかるくらいのっぺりしていたそこが盛大に膨らんでいた。
いくらそこには何もないとわかっているとはいえ、あまり見てはいけないと思い今まで意識して見ないようにしていたのだが、それでも前に見た時の何の膨らみのない下着姿の彼とのギャップが激しくて頭の中はぐちゃぐちゃだ。しかし、そんな私になぜアタッチメントを取り付けたのかを話し、追い打ちをかけてくるコナー。
いや、確かにその話題が出たことはあったが、セックスはしないと言ったはずだ。なのに、いつ私とセックスすることになっても大丈夫なようにとは一体…。セックスはしないと言った時、口ではそう言っているけど実は物欲しそうな顔でもしていたのだろうか…。わからない…どうなんだろう…。本当はコナーとセックスがしたかったのだろうか…。
きっと、私にLEDが取り付けられていたら真っ赤に染まっているだろう。そのくらい混乱しているのだ。だから「…僕と夜更かし、してくれますね…?」とふんにゃり微笑むコナーに頷いてしまったのも、まだ馬乗りになっている私の太腿に手を這わせる彼のその手の感触にゾクゾクと身体が反応してしまったのも、すべて仕方のないことなのである。



そんなこんなで夜更かしをするのが余程嬉しかったのか、勢いよく上半身を起こしたコナーが、ずるりと彼の股間部分にずり下がるように座ることになって驚く私をもう堪らないとでも言うように強く抱きしめ、尻に感じる彼の例のブツのそのあまりの存在感に正気に戻る私を図らずも逃げださないように捕まえているという、かなり危機的状況に陥っている。
何が『すべて仕方のないことなのである』だ。そうやって欲に流されたから、こうやって尻に結構な質量のモノを感じるはめになったのではないか。しかも、このままだと尻どころか膣で感じるはめになってしまうというおまけつきだ。…いや、おまけではなくそれが本来の目的か。まぁとにかく、すみやかにこの状況を打破しないと一夜の過ちを犯すことになってしまう。

「はぁ…やっと、やっとあなたと愛し合うことができる…」と歓喜に震えるかのようにふるふると私の首元に擦りつき、痛いくらい力強く抱きしめてくるコナーの背をぽんぽんと叩きつつ、一度OKしておいてあれなのだが違う夜更かしの仕方ではダメだろうか。明日1日、私に甘え倒すとかそういう感じの夜更かしの仕方とか…。と提案してみるも、「ダメです」ときっぱり言われ、首元をきつく吸われる。痛い。めげそう。
しかし、ここでめげては一夜の過ちまっしぐらなため、めげてはいられない。ぺろりと自分が吸ったところを舐めるコナーに同じ職場で一夜の過ちはよくない。別に同じ職場でなくても一夜の過ちはよくない。とにかくよくない。と、わあわあ説得するも「なぜ一夜の過ち?僕は一夜の過ちにするつもりはありませんが」と、これまたきっぱり言われ、いやいやいや!むしろ一夜の過ちでないほうがもっとよくないから!職場恋愛は別れた後が地獄だから!と吠える私の口を「いいから静かに」と自分の口で塞ぐコナーはまるでドラマの俳優のようでかっこいい。
これはもう、コナーに抱かれてもいいのでは…?


最初は唇を合わせるだけだったキスも、今では先ほど私がコナーにしたような激しいキスになっている。だけど、それだけだ。一向にキスから先に進まない。
コナーからのキスでとろとろにされ、もう彼を止める意思も言葉もない状態なのだけど、彼はまだ私の口を塞ぎ続けている。それはまだ私が彼と夜更かしをすることを拒否するとおもっているのか、それとも単にその先を知らないのか。
もしや、この生殺し状態に我慢できなくなった私がコナーにいろいろとねだるのを待っているのでは…?という考えがぼんやりと浮かんできたところで、今まで散々私の口内を堪能していた彼の唇が離れ、おそらくだが私よりもとろとろな表情をしている彼と目が合う。こんなにもとろりと欲に溺れている彼の顔を見るのは初めてだ。

「えっ…セックスの仕方、ですか…?知っていますが…」

舌を使いすぎたせいで回らなくなったのか、ふわとろとした笑顔で私の名を何度も呼ぶコナーは舌足らずで幼い。そんな彼にこちらもふわとろとセックスの仕方がわかるかどうかを聞くと、一応知っているという答えが返ってくる。だけど、その直後に私の頬を両手で包み、再び顔を近付けキスをしようとしてきたから本当は知らないのだと思う。だって、いくら何でももうキスのフェーズは終わりだって、この互いのとろとろ具合を見ればわかるだろう。それなのにまたキスをしようとしてくるなんて、余程キスが好きかセックスの仕方を知らないかの2択しかない。…たぶん。きっと。
だんだんと曖昧になっていく自論を確かなものにしたいのと、このままではまたキスで次に進めなくなるのを防ぐため、唇が合わさる寸前で彼の唇に手をあててそれを阻止し、なぜそんなことを?と悲しそうに首を傾げるコナーに、セックスの仕方を知らないことは決して恥ずかしいことではないこと。むしろ知ったかぶりをするほうが恥ずかしいこと。だからセックスの仕方を知らないのならちゃんと言ってほしい。ということをとろとろと話すと、ふにゃとろしょんぼりだった彼が「はぁ…そうですね…?」と、身体が傾くほど首を傾げ始めた。
これはもしかしなくても余程キスが好きなほうだった…?


「あの…僕のキス、気持ちよくありませんでしたか…?いつかあなたとしたいと思って、メディアや電子書籍、ネットの情報などを何度も見て学んだのですが…」

自論の2択しかない選択肢を盛大に間違えた私におずおずと自分のキスの上手さを聞くコナーは、まだふにゃりとはしているが見ていてかわいそうになるくらいビクビクと怯えている。
自分なりに万全の態勢で臨んだのに、こうしてセックスの仕方云々とよくわからないことを言われキスを拒否されたら誰でもこうなるだろう。私だって彼の立場だったら自分のキスが上手くないのを遠回しに言っているのだと思って落ち込むし、後で泣くだろう。
もちろんこれ以上怯えてほしくはないのと、後で落ち込んで泣くということになってほしくもないので、全力でコナーとのキスはとても気持ちよかったことを伝える。すると「では、なぜ僕とのキスを拒否するんです…?」と問われてしまい、これはもうキスより先に進みたいという己の欲を白状するしかない。

「キスより先のこと…?もう…?」

コナーとのキスはとても気持ちがいいし最高なのだけれど、それ故にそろそろそこから先のフェーズに進んでもらいたかった。だけどなかなか終わらないキスに業を煮やしてつい本当はセックスの仕方を知らないからずっとキスをしているのだと思い込み、あのようなことを言ってしまったのだ。と慌てて白状すると、彼がぽつりとそう呟いた。
“もう…?”と思っているということは、コナーはまだキスし足りないということで、そうなるとやはり彼はキスがとても好きということになるわけで。
股間に存在感があまりにもあるアタッチメントをつけているのに、それを使う行為よりもキスが好きなコナーがとんでもなくかわいくてめまいを覚える私に「……あの、これは僕のわがままなのですが、もう少しだけキスのフェーズに留まってはいけませんか?キスは言葉よりも確かに愛を伝えることができるのだと、そう聞いたもので…」ともじもじと言う彼は、確実に私を殺しにきている。
一体誰にそのことを聞いたのか。とか、そんなわがままはわがままのうちに入らない。とか、どうしてそこまでかわいいのか。とか、言いたいことは山ほどあるのだが、ちらちらとかなりの頻度で私の唇を見ている彼をこれ以上待たせてまで言うことではないのはわかる。だけど、唯一これだけは言わなければと思い、もう少しと言わず満足のいくまでキスのフェーズに留まってもいいけれど、股間のほうは大丈夫なのかと聞くと「…股間?」とポカン顔。
えっ、こんなに存在を主張しているのにその持ち主である本人がそのことを忘れている…?

「あ、あの…もう、わかりました、から…動か、ないで…っ…」

何のことだかさっぱりなコナーに、自身の腰を動かして尻の下にあるアタッチメントを刺激してやっと何のことだかわかる彼が大変かわいい。だが、今の刺激によって再びとろんと欲情し始めた彼はもうキスだけでは満足できないのではないだろうか。
なんて思う私の頬にそっとキスをしたコナーは「股間のほうは、大丈夫にしますから…キス、してもいいですか…?」と、餌を前にして我慢する犬のようにふるふると私の言葉を待っている。すごい。ここでセックスに移行するのではなくキスを選ぶとは。私なら秒でセックスに移行しただろう。
肉欲より愛をとった、とまではいかないかもしれないが、とにかく私に愛を伝えることを優先したコナーの純粋さを眩しく思うのと同時に、自分の不純さを改めて思い知らされたわけだけれど、今はそんなことで落ち込んでいる暇はない。徐々に眉が下がり、下唇を噛みしめだす彼のその唇めがけてキスをおくり、コナーの好きなようにしてと微笑む。すると、待ってましたとばかりに後頭部と腰を引き寄せられ、唇に噛みつかれる。そして、それに驚き声をあげる私の口内に舌を入れ、激しく愛を伝えだす。
余程嬉しいのか、それとも興奮しているのか、「んぁ…ふっ…」と声を漏らし続けるコナーがどうしようもなくかわいいし、その声を聞く度に腹の奥が疼いて仕方がない。そのため、少しずつではあるが腰が動いてしまい、その刺激で彼がより声を出してしまうという悪循環に陥っているが、もうこのままキスをしながらこうして気持ちよくなり、最終的に果てればいいのではないか?それならコナーも我慢する必要はないし、いいことづくめなのでは?


ぴたりと身体を合わせ、キスに夢中なコナーの胸を何とか押して「え…もう、終わり…?」とふにゃしょぼしている彼に首を横に振り、今まで尻の下で窮屈そうにしていたアタッチメントを下着から取り出してから私の股や彼の下腹らへんで挟むように座り直すと、困惑したような表情で「な、何で…こんな…」と私を見るコナー。
それに対して、キスで愛を伝えることができるのなら、互いの大事なところをこうやってくっつけることによって伝わる愛もあるのではないかともっともらしいことを言うと、「……確かに、そうかもしれませんね…」とふにゃんと笑う彼がとても愛おしくて、こちらまでふにゃりと笑顔になってしまう。
だけど、直後にコナーの口からこぼれた「…でも、素肌で触れ合えるわけではないから…僕の愛がちゃんと伝わるかどうか…」という、服が邪魔でぴったりくっつくことができない的なことをオブラートに包んだ言葉を聞き、思わず笑顔のまま固まってしまう。
そうだね、コナーはボロンしたもんね…だから私も寝間着や下着をスポンしないとね…。

身につけているものを脱ぐから少し待っていてとベッドからふわふわと降り、さすがにいきなり全裸は恥ずかしいので、コナーと同じく下半身だけ脱ぎ捨ててしまおうとする私を目をかっぴらいた状態で見ている彼に目を閉じるよう言い、渋々といったかたちで目を閉じた彼を確認してから穿いているものを脱ぎ捨てる。…下着がすごいことになっていたような気がするけど、それは見なかったことにした。
そしてベッドに戻り、いつの間にか私と同じく下着を脱いでいたコナーの上に跨り、再び対面座位のかたちになる。互いに余計な布がないため、キスによる刺激で分泌された体液が肌を合わせる度にくちゅくちゅと音をたてる。それだけでも興奮材料にするには十分なのに、さらにそのぬるぬるとした感触が加わるものだからもう堪らない。
試しに自分の股間を彼のアタッチメントに這わせるように上に動かすと、滴り落ちんばかりだった私の体液が彼のアタッチメントに絡み、敏感なところをぬるりと刺激する。それに声を上げる私を興奮したように見上げるコナーも、先端付近までねっとりと擦りつけると「あっ…あぁ…」と気持ちよさそうに声を上げる。かわいい。
このままコナーのアタッチメントを中へ迎え入れたらどうなるのか。試してみたい気持ちも確かにあるけれど、太さも長さもかたちも理想的な彼の欲張りアタッチメントを受け入れるにはいろいろと準備不足なため実際にはしないが、それでも思い浮かべてしまう。彼が中に挿入した瞬間、かわいい声を上げて果てるところを。

「はっ…んんっ…好き…あなたが、好きっ…んぁっ」

先ほどはもうキスをしてもいいかとお伺いを立ててきたコナーも、今回はもう待てないとばかりに言葉もなくキスを再開し、口内を愛で始める。しかもそれだけではなく、キスの合間に私への想いも一生懸命伝えてくれるのだ。これが嬉しくないはずがない。
しかし、コナーの“好き”や“愛している”がどういう意味で使われているのか定かではないため、こちらもどう返せばいいかわからない。いや、こんなセックスといっても過言ではないことをしているのだから、本来ならば彼が私に向けているのは性愛などが含まれる大人向けの愛だと思うのが当たり前だ。しかし、ハンクが言うには彼はまだ生まれたての赤ん坊なのだ。そうなると、親子愛や家族愛などのほんわかした愛を、何かの間違いで大人向けの愛と勘違いしているのかもしれない。
キスは返すけれど一向に言葉にして好意を伝えない私に思うところがあるのか、単にキスだけでは我慢できなくなってきたのか。顔を離したと思ったら片手は私の尻を抱えるように持ち、もう片方の手は私が体勢を崩さないように腰を掴み、首元に額をつけると、ゆさゆさと私を上下に動かして股間同士を擦り付け始める。正直、キスよりも気持ちがいいので自然と声が大きくなってしまうが、それに反してコナーの声は短い息遣いのみで不安になる。
私が彼の気持ちに応えないからもうキスはやめてしまったのだろうか。言葉にして伝えても意味がないと思ったから、もう何も言わなくなってしまったのだろうか。
この行為にコナーの愛があるかどうかわからないことに不安を覚える私は、もしかしたら…。


私を上下に揺するだけでは物足りなくなったのか、今では私をベッドへ倒し、両膝の裏に手を差し込み、限界まで足を広げた状態で股間同士を擦り合わせている。
いや、いきなり強要されたそのあられもない格好に対して抗議しようと最初は思っていたのだ。しかし、コナーのそのギラギラと欲を孕んだ目を見たら、先ほどの2択である私が好きだと言わないからキスしなくなったのか、それともただ我慢できなくなったからかという選択をまたものの見事に選び間違えていたことに気付いたのである。そう、彼はキスだけでは我慢できなくなっただけだったのだ。彼が私のことを好きではなくなったからキスをやめたのではなかったのだ。
もうそれからは今まで感じていた不安やら何やらから解放され、大股開きもまんぐり返しもどんとこい状態だ。それほどコナーに好きでいてもらえて、愛していてもらえて嬉しいのである。
ちなみに自分の新たな選択に自信を持ちたくて、一心不乱に腰を動かしているコナーに私のことが好きかどうか、あんあんと途切れ途切れ聞いたら「好き!です!」と、はちゃめちゃに大きな声でそう言ってくれたし、じゃあ愛してる?とこれまたあんあんと途切れ途切れ聞いてみたら「愛、してるっ!」と、こちらもはちゃめちゃに大きな声で答えてくれたので大丈夫だ。私は彼に好かれているし、愛されている。
その事実が、どうしようもなく嬉しい。


「ふっ…っ…も、もう…もうっ…」

アタッチメントの先端部分をぐりぐりと私の股間に擦り付けるコナーはもう限界のようで、膝裏を持つ手が微かに震えている。もちろん、散々彼の欲張りアタッチメントをいいところに擦り付けられた私としてももう限界だ。喘ぎながらも彼に同意するように頷く。
しかし、普通ならここでラストスパートをかけるのでは?という時にぴたりと動くことを止められてしまったので、もう訳がわからない。なぜここで止める?生殺しプレイか?それともアタッチメントの不具合?というか、そのアタッチメントから溢れ出している液体は一体何?アダルトグッズによくある擬似精液の体液版?何?何??何???

だんだんとぐちゃぐちゃになっていく思考と相変わらず疼き続ける身体。このままだと気が狂ってしまうのではないかという言葉が頭の片隅でチカチカしだした時に、今まで黙っていたコナーが顔を苦しそうに歪めながら私の名を呟き、「…僕は、あなたのことが好きです」「あなたのことを、愛しています」「まだ、あなたと出会い、それほど経っていませんが…それでも、その気持ちは本当です」「本当、なんです…」「だから…僕を受け入れて」「僕を、愛して…」と切々と訴える。
…そうだ。私、コナーに散々自分のことが好きか、愛しているかを聞いたのに、彼にまだ自分の気持ちを言っていない。夜更かしをする前に聞かれた時に何となく答えて以来、彼に好きという言葉も愛しているという言葉も言っていない。…最低だ…。


いきなり大声で謝罪する私を、彼は一体どう思っただろう。
目をまるまると見開き、何事だとこちらを見るコナーは先ほどの苦悶の表情から一変してポカンと間の抜けた顔している。かわいい。コナーの表情の中で上位に入るやつだ。…いや、そんなことを思っている場合ではない。彼に自分の気持ちを言わないと。

というわけでポカンとし続けているコナーに、あなたのことが好き。大好き。こうしていろんなことをしているうちに改めて自分の気持ちに気付いたの。だけど気付きたてのこの想いはまだ未熟で、きっとこれより前から私のことを好きでいてくれたあなたは物足りなく思うかもしれない。だけど、この想いだって本物だ。あなたを愛しているというこの想いは。だから、あなたも受け入れて。私はもう受け入れる準備はできている。…ねぇ、コナー。愛してる。と、畳みかけるように自分の想いを叩きつける。仰向けに寝転がったまま、しかも大股開きのままで。
すると、股の間でいまだに私の足の膝裏を持ってポカンとしているコナーがふるふると震えだし、やはりこの大股開きでの愛の告白は精神に異常をきたしてしまうからやめたほうがよかったかと慌てていると、ぶわわと大量の涙を流し始めた彼が幼い子のように私の名を呼びながらどしりとダイブしてきた。そして、下でつぶれている私をぎゅうぎゅうと抱きしめ「僕も!僕もっ、大好き!」「ハンクより、スモウよりっ、好きです!」「あ、愛っ、してる…!」と耳元で泣きながら叫ぶ。…耳が…。


「すみません…あなたにこの気持ちを受け入れてもらえて、しかも愛していると言ってもらえたのが嬉しくて、感情の制御が上手くできず…本当にすみません…」

しばらくの間ぐずぐずと泣いていたコナーの背をよしよしと撫で続け、「…僕はアンドロイドなのに、なぜ涙を流しているんだろう…」と突然冷静になった彼をさらに撫で続け、ついに無言でころりと私の上から退き、横で顔を両手で覆っている彼の頭を撫で始めたところで、今度は羞恥に震える彼がぼそぼそとこれまでのことを謝罪する。
そんなコナーに、感情は制御するものではないし、あなたの本音が聞けて私は嬉しかったということを話すと「……本当ですか?」と指の隙間から目だけを覗かせて私を見るコナーはとんでもなくかわいい。だけど、そろそろコナーの顔が見たい。そのかわいい顔が。
ほら、顔を見せてと手を取りそっと退かし「…あまり見ないでください。今の僕の顔、きっとひどいことになっていますから」と弱々しく言うコナーに、ふふっと笑いながらこれからよろしくねと言うと、彼は「…こちらこそ、これからよろしくお願いします」と、嬉しそうにふにゃりとはにかんだ。


この”夜更かし”が夢ではありませんように。


[ 16/18 ]

[*prev] [next#]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -