夢のその先へ3

後日談その3。




なんやかんやでハンクの家に引っ越してきてもう半年近く経つ。
はじめは家具の配置や、部屋の掃除、持ってきた荷物の整理などで忙しくなかなか自分のこと以外はできなかったのだが、次第にコナーが散々言っているにもかかわらずなかなか改善されないハンクの食生活や、ハンク曰く掃除洗濯はともかく料理は壊滅的なコナーが「もう我慢できません。僕がハンクの食事を用意します」「大丈夫、カロリー計算はお手の物です」とやる気満々でキッチンに向かうのを毎回宥めたり、定期的に「なぜスモウのことは毎日抱きしめて僕のことは抱きしめてくれないんですか!」と文句を言うコナーをその都度宥めたり、ピザに限界までチーズのトッピングをつけようとしたのをコナーに却下されて「レッドアイスじゃあるまいしチーズぐらいトッピングしたっていいだろ!」と怒るハンクを何度か宥めたりと何だかよくわからない理由で忙しくなってきたため、引っ越しの跡片付けもほぼ終わった頃に私が食事を用意すればそのごたごたの大半である食事関係での忙しさを解消できると思い、捜査などで忙しくないときに限り朝食と夕食を用意することを申し出た。すると食事関係でのコナーとハンクのいざこざは減り、少しではあるがハンクの体重も減ってきたのでこの判断は間違っていなかったと思う。
そして今では「テーブルの上を片付けて、スプーン、フォーク、グラス、飲み物を出しておいたよ。他に何か手伝えることはある?」と毎回手伝ってくれるコナーと「トースト2枚で足りるのか?警官なんて体力勝負なんだからもっと食わねぇとそのうち倒れるぞ」と朝食の用意をしてくれるようになったハンクのおかげで時間に余裕ができ、食事以外の家事もスムーズにこなせるようになった。とはいえ、大家族の家事を実家を出るまで手伝っていた身からすれば、この家の家事など朝飯前なのだが。


掃除や洗濯、家事、スモウの散歩などを理由に買い出しに行くのを渋っていたため食料があともう少しで底をつくという状態になってやっと買い出しに行こうとする私は根っからのめんどくさがりなのだが「じゃあピザとればいいじゃねぇか」と安易にデリバリーに頼ろうとするハンクも大概だと思う。
そんなわけで「あぁ…ピザ、ハンバーガー、ドーナツ…」と嘆くハンクと「確かにピザは久しく食べていませんが、ハンバーガーは一昨日の13時54分に食べていたでしょう?それにドーナツは毎日誰かしら差し入れしてくれるので非番以外食べているじゃありませんか」と小言を言うハンクと共に近くのスーパーマーケットまでやってきた。このスーパーマーケットは数あるスーパーマーケットの中でも特に大きく、揃わないものはないのではないかというくらい品ぞろえが豊富だ。
先ほどのように頻繁に買い出しに行くような玉ではないのでここで買うのは主に冷凍の肉や野菜、そして冷凍保存するための生魚だが、それだけでは味気ないので嗜好品なども買う。むしろハンクはこの嗜好品を買うためにここにきていると言っても過言ではないだろう。今日もこの店に入ると同時にふらりとどこかへ行き、大量の酒やつまみなど持って戻ってきた。「まったく、またこんなに持ってきて!」とぷりぷり怒るコナーに「ピザがダメなんだ、酒ぐらい飲ませろ」と文句を言いながらカートにそれらを入れていく。そんなにピザが食べたいのかと聞けば「あぁ、食いたい」と素直に言うハンクに、では今日の夕飯は手作りピザでどうかと提案すると「お、お前ピザ作れるのか!?」と驚かれる。昔作ったきりだが家にオーブンレンジもあることだし何とかなると思うと答えると「よし、じゃあ今夜はパーティーだな」とわくわくした様子のハンクが「ポテトとチキンは俺に任せろ」とそのふたつを探しに旅立っていった。それを見送るコナーの眼差しは今までの小言とは裏腹にとても優しい。

ハンクがピザの付け合わせを探す旅から帰ってくる頃にはこちらもコナーと手分けをしてピザの材料や日用品、スモウのごはん、スモウ関係の日用品を探し終えていて、あとはレジで精算するのみというところでコナーが何かを見つけたのかピュッと先へ行ってしまった。一体何を見つけたのかとハンクと共にコナーがいるところまで行くと、そこには最近発売されたばかりの風味がついているブルーブラッドが売っていた。まだ種類は少ないがレモン風味やバニラアイス風味、はたまたハンバーガー風味など、人間と同じように食を楽しみたいというアンドロイドの声をもとに作られたもので、価格は通常のものより高いが巷ではおいしいと評判なため、置いている店は多いのだが売り切れていることが多い。
CMでは何度も見たことはあるものの現物を見るのは初めてなコナーは、現物を前にきらきらと目を輝かせている。そんなコナーを見るハンクの眼差しは先ほどのコナーがハンクを見ていたときのように優しい。
ハンクは息子を亡くしている。それは知っているのだが、この慈しむような眼差しはどう考えても我が子に向けられるものそのものだと、まだ長いとは呼べない月日をこのふたりと過ごしてきてそう思う。もちろん、コナーもハンクの中に父親を見ていると思う。ハンクに対する小言はすべてハンクに1日でも長生きしてほしいと願っているため出てしまうものだろう。そんな、もうほぼ親子なふたりが私は大好きだ。

「何だ、買わないのか?」

「…えぇ、まだストックがありますから」

「でも風味が付いたやつは持ってないんだろ?」

「まぁ、そうですが…」

親子なふたりを微笑ましく見ていると、今まで嬉しそうに風味がついているブルーブラッドを見ていたコナーが何も持たずにこちらに戻ってきた。ハンクがいろいろと尋ねるも歯切れが悪い。ハンクには話しづらいことなのかもしれないとこそっと聞いてみると「ハンクに甘いものや高カロリーのものをあまり摂取しないように言っている僕には、あれを摂取する資格はないんじゃないかと思って…」としょんぼりするものだから思わず笑ってしまった。「何もおかしいことは言っていないはずだけど」とLEDが真っ赤なコナーに謝り、今コナーが言ったことをハンクに言うと「ったく、そんなくだらねぇこと考えてたのか」と呆れ、再び怒り出すコナーに「俺のことを考えて言ってくれてるんだろ?だったら何の問題もねぇ。ほら、どれがいい?お前のほしいやつ全部買ってやるぞ」と言いながらコナーの肩を抱き、そのままブルーブラッド売り場まで連れて行く。
「じゃあ、これがほしいです」と手に取ったのはピザ風味で「…僕もあなた方と一緒にピザが食べたくて」と恥ずかしそうに呟くコナーにハンクとふたりで身もだえてしまい「どうしました?ふたりとも」と心配をされつつ、ピザ風味以外もカートに入れてレジへ。私がコナーに甘いのは周知の事実だがハンクも大概コナーに甘いと思う。きっと本人は否定するだろうけど。


オーブンレンジで焼いたピザも、栄養が偏らないようにと用意したサラダも、ハンク自ら油で揚げたポテトも、これまたハンク自ら焼いたチキンも、即席で用意したスープも、ハンクが気に入っている酒も、すべてがおいしくて最高のパーティーになった。コナーも「ピザというものはこのような味なんですね」とにっこり笑っていたし、ハンクも「うまいだろ?」と上機嫌でコナーと話していたし、今日は心の温まるとても良い夜になったと思う。
ピザパーティーの余韻に浸りつつスモウに抱きついて頬ずりする私と、そんな私を後ろから抱きしめるコナーを見て「何やってんだか…」と呆れたハンクがソファーでくつろいでいるときに、テレビから政府がアンドロイド同士の婚姻を認めるというニュースが流れた。「またひとつ、マーカス達の活動が実を結びましたね」と後ろから優しい声が聞こえ、「あぁ、そうだな」とこちらも優しい声がソファーから聞こえてきた。
コナーの言うマーカスという人物はアンドロイドの自由と人権のために革命を起こしたアンドロイドで、今は同じ志を持つ仲間と共にジェリコという組織で活動している。今回のアンドロイド同士の婚姻も政府との協議を重ねて成し得たものだろう。コナーも彼等とは知り合いでその活動を心から応援している。

「これでマーカスとノースも婚姻を結ぶことができるんですね」「そうだな。あいつらがアンドロイドで最初の夫婦になるんだろうな」などと話しているふたりのその会話を聞きつつスモウを撫でていると、ハンクが「でも残念だな、アンドロイド同士で」と唐突に話してきて首を傾げる。なぜ今まで祝福ムード一色だったのに残念などと言い出したのだろう?実はアンドロイドのことをあまりよく思っていない?いや、そんなバカな。昔のハンクならばともかく今のハンクに反アンドロイド的思考はないはず…。
ハンクの言葉の意味をぐるぐると考える私をよそに「アンドロイドの婚姻、だったらお前もできたかもしれねぇのにな」「あぁ、そういうことですか。確かにそれだったら僕も結婚できることになりますね」と話しを続けるふたりは「まぁ、いつかはアンドロイドの婚姻も認められる日がくるでしょう。僕のように人間を恋人に持つアンドロイドも数はまだ少ないですがいるみたいですし、マーカス達が何とかしてくれることを願いますよ」「あいつ等なら何とかするだろ。ま、その日がきてもお前はなかなか結婚できそうにないけどな」「確かに」とさらに話を続け、最後にハハハとおかしそうに笑った。
今の会話でハンクがアンドロイドをよく思っていないわけではないことはわかった。あとその話題にコナーが絡んでいることも。しかし今回のニュースでわかったのはアンドロイド同士の婚姻が認められたということ。だが、私はアンドロイドではないためコナーと結婚することはできない。それなのになぜアンドロイドの婚姻だったらコナーも結婚できたかもしれないとハンクは言ったのか…と、ここまで考えたところでハッとした。アンドロイドの婚姻ならアンドロイド同士ではなくアンドロイドと人間の組み合わせでも婚姻できることになる。今のアンドロイド同士という枠ではなく、アンドロイド個人の婚姻が認められたということになるからだ。
やっとふたりの会話の意味がわかり晴れやかな気持ちになっている私を見て「…なぁ、コナー。こりゃあ本当に苦労するかもしれんぞ」と苦い顔をするハンクと「…婚姻が認められるようになる前にどうにかしないといけませんね」と苦虫をみ潰したような声をあげ、私をきつく抱きしめるコナーのその意図がわからず困惑するが、もう頭を使いたくないためスモウのふわふわな身体に顔を埋める。頭を使うのは捜査時と毎食の献立を決めるときだけでいい。



あのピザパーティーから何となく経ったのだけれど、コナーがRK900と話しているところをよく見かけるようになった。最初にその場面に遭遇したときは、なぜか900に対していい思いを抱いていなかった彼が900と話しているということに驚き、ふたりが話している最中にもかかわらず話しかけてしまい「あぁ、別に何でもありませんよ」と言うコナーと、何かを言おうとしてコナーに口を塞がれてLEDを赤くしている900にはぐらかされてしまった。きっと何か訳があるのだろうと、それからふたりが話しているのを見かけても話しかけたりしないようにしているのだが、気になるものは気になる。というわけで、最近900とよく話すようになった、以前コナーに恋をしていた例の彼女に話を聞いてみることにした。
彼女には当たり前だけどコナーと付き合い始めた頃はかなり嫌われていたが、付き合い始めてより人間味を増す彼にいろいろと思うところがあってもやもやしているときにやってきたRK900という存在によりコナーのことを吹っ切ることができたらしい。それで別に嫌う理由もなくなったということで、今ではこうしてちょくちょく話す仲にまでなった。
彼女の話によると、話をしているのはほぼコナーで900はただ聞いているだけらしい。何の話かまではコナーが口留めをしているらしく教えてくれないそうだが、コナーの話を聞くのを面倒だと思っているとのこと。彼女はまだ変異体ではない900がコナーによって感情を持ち始めたと喜んでいるけれど、こちらからすればコナーが仕事の邪魔をして申し訳ないと思うし、口留めするようなことを話して900を巻き込んだことも申し訳ないと思う。謝ろうにも彼はギャビンやコナーや彼女といることが多くてなかなかひとりでいることがないせいで謝ることができない。どうにか隙を見て彼に接触しないと…。
それから隙をついて900に謝るために署にいるときは雑務をこなしながらも900の様子を窺っているはいるが、そもそも署にいることがあまりない。そして署にいるときでもギャビンの傍を離れないため隙をつくことができずにいる。しかも運よくギャビンと離れてもコナーや例の彼女が900の傍に行ってしまうため、やはり隙をつくことができない。まさかデトロイト市警での900の人気具合に嫉妬してしまう日がくるとは思わなかった。

「いい加減あのプラスチック犬のことどうにかしろよ、このポンコツ飼い主」

コナーのことについて900に謝ることができないのと、いまだに何の話をしているかは知らないが時に嬉しそうに、そして時に難しい顔をしながら身振り手振り話しているコナーをとめることができないまま数か月が経った。ここまでくるともう自分の中では諦めムードが漂いはじめていて、900に対して早いとこ変異体になってコナーに話しかけないよう注意するか、変異体にならなくてもいいからコナーにもう話しかけるなって言ってくれ頼む…という気持ちになっている。そして本当にいまだに900と何を話しているのかそれとなく聞いても「あぁ、大丈夫。何でもないよ」と雑にはぐらかされていて、彼等が何を話しているのか知ることができないでいる。別に浮気などは疑っていないけれどそこまではぐらかされるとさすがに悲しい。
そんな鬱々とした状態で書類を整理しているときにやってきたギャビンがコナーのことで苦言を呈してきたので、思わずほろりと泣いてしまった。しかし「マジかよ!?」と驚くギャビンに勢いよく指で目尻を擦られたのが痛くて泣くどころではなくなったためいろいろと事なきを得た。今コナーはブレイクルームに900を連れ込んで何かを話している。泣いていると知られたらまずい。

「…で、どうした?プラスチックのプラスチックがポンコツにでもなったか?」

きっと彼なりに心配してくれてはいるのだろう。その証拠にその眼差しには優しさと不安を孕んでいる。だが、如何せん言い方が悪い。何だ、プラスチックのプラスチックがポンコツになったとは。確かにコナーのコナーはプラスチックだろうが別にポンコツではない。むしろ優秀だ。私のコナーはどこをとっても優秀なのだ。
ギャビンのモノより優秀に決まっているだろうと両手でサムズダウンすると「ハァ!?あんなやつにこの俺が負けるわけねぇだろ!」と掴みかかってくるものだからついギャビンのギャビンなど見たことはないがそれでもコナーのほうが優秀だと、その掴みかかる腕を掴み対抗してしまった。そして始まる取っ組み合いと「上等じゃねぇか!そんなに言うなら見せてやるよ!」という怒号。ついつい売り言葉に買い言葉でそれなら見せてもらおうかと言ってしまったことによりさらに激化する取っ組み合い。ガシャーンと椅子に座ったまま背中から倒されゴロゴロと掴み合いながら転がっていると、上に乗っていたギャビンの身体がヒョイっと浮いた。ギャビンとふたりで何事かと目を丸くしていると今度は私が誰かによって抱えられ、そのままギャビンから距離をとるように遠ざかる。それによってわかったのはギャビンが900によって持ち上げられていることと、私がコナーによって抱きかかえられていること。
「…一体何をしていたのか、教えてくれますね?」と言うコナーの声色は凍てつくように冷たい。

使われていない部屋まで連れてこられた私とギャビンは、互いに部屋の中央で下ろされその場に立たされる。ギャビンは「何でこの俺がプラスチックどもに指図されなきゃならねぇんだよ!」と怒っていたが900による容赦ない拳骨により静かになった。900はギャビンがこうして騒ぐ度に鉄拳制裁をくわえているのだろうか。私だったら一発食らっただけで署長に泣きつくだろう。
私の先輩がコナーでよかったと胸を撫でおろしていると、腕を後ろで組んだコナーに「…それで、何をしていたんですか?」と聞かれる。ちなみに900もコナーと同じ格好で目の前にいるため威圧感がすごい。何だこの威圧感は。しかしコナーと900の威圧感に圧倒されているのは私だけみたいでギャビンはそっぽを向いている。きっとこの調子だとコナーの問いに答えることはないだろう。そうなると私が話さなければずっとこの状況が続くわけで、この威圧感にずっと圧倒され続けることになる。それだけは何とかしないといけない。私は威圧感バリバリのコナーよりふんわり優しいコナーのほうが好みなのだ。
先ほどのくだらない取っ組み合いの内容を言う恥よりもふわふわコナーを取った私は、ギャビンにコナーのコナーをバカにされて腹が立った末の出来事だと正直にふたりに話した。するとコナーには「……はい?」とそんなことで?という顔をされ、900には眉間に皺を寄せられてしまった。隣ではギャビンが相変わらずそっぽを向きながらも肩を震わせ静かに笑っている。
確かにRKコンビに呆れられるのもギャビンが笑うのもわかる。私だって大のおとなにそんなことで取っ組み合いの喧嘩をしていたと言われたら呆れるし笑ってしまう。だけど当の本人であるギャビンが説明を私に押し付けたくせに笑っていることが許せない。なぜ当事者のくせに笑っていられるのか。いや、私も何だかじわじわとおもしろくなってきたけれど。でもとにかくギャビンはダメだ。ギャビンだけは許せない。
何自分だけ恥もかかずに笑っているんだと横にいるギャビンに体当たりをすれば「いってぇな!こんなん笑うに決まってんだろ!」とクロスチョップで反撃されて再び取っ組み合いの喧嘩に!と言いたいところだが、ギャビンがクロスチョップをキメた瞬間900が首根っこを掴んで私から引き離し、コナーもクロスチョップを食らってよろける私を支えつつギャビンから離したので喧嘩は未遂に終わった。そして私とギャビンも終わったと思う。だって900のLEDが赤く点滅してるのを見てしまったし、きっと後ろで私を支えているコナーもそうだろう。なので私達はもう少ししたら終わるだろう。それがどんな終わり方かは知らないが。

「もう…そのようなよくわからないことで何度もギャビンと喧嘩しないでください」

900に再度拳骨を食らい静かになるギャビンを見てそろそろ私もコナーに拳骨されるかもしれないと震えていたのだけれど、予想に反してちょっとした注意で終わってしまったので、やはり先輩がコナーでよかったと改めて思う。もし900が先輩だったら毎日拳骨されて頭が陥没していただろう。
素直に謝ると「まったく、何が理由でそういう話題になったのか知りませんがもう彼とそのような話をしないでくださいね」と再び注意される。そこで思ったのがもとはと言えばコナーが長いこと900と内緒話をしていたからこうなったのではないかという理不尽で身勝手な考えで、さすがにそれはいちゃもんがすぎると思いながらもここ何か月かで溜まっていた鬱憤を外に出さないよう押しとどめることはできず、コナーにすべてぶつけてしまった。その鬱憤をぶつけられた本人はポカンと私を見つめたあと「…それは、嫉妬かい?」と聞いてきた。…嫉妬?私はただ900と何を話していたのか知りたかっただけで決してコナーと話している900にしたわけではない。と思うのだけれど「嫉妬だね?」と嬉しそうに嫉妬だと認定して私の手を握りしめるコナーに今さら違うとは言えない。コナーには甘いことでおなじみの私にできるはずがない。
「実は一度嫉妬されてみたかったんだ。君からの嫉妬という愛を受けてみたかったんだよ」とにこやかに言うコナーに「ハァ?んじゃ、その茶番のためにこのデカブツは利用されたってことかよ!?」と怒るギャビンは間違ってはいない。自分の相棒がそんなよくわからないことに利用されていたら誰でも怒るだろう。しかし「いえ、違います。RK900には相談に乗ってもらっていただけだ」と言うコナーと、それを聞いて頷く900がその茶番を否定したため結局真相はわからずじまいだ。

「今はまだ教えることができないけれど、必ず君に教えるから。だから待っていて」

「おいおい、署内ファックだけはやめてくれよ」と言い三度900の拳骨を食らうギャビンを無視して私はコナーに近づき、握りしめられた手を彼の指に絡め頷く。
待つよ。ずっと待っているから。だからいつか私にその理由を教えてね。お願い。


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