昨日この学校の近くで変質者が出たみたい。今、担任の先生がそのことで女子に注意を促してる。
ま、帰宅部のあたしには関係ない話ね。帰宅部だから暗くなる前に家に帰るし、それに夜に出歩いたりもしな……シンジの家から帰るときぐらいしか夜出歩かないし。だから大丈夫。


つーか、その変質者も暇人よね。女の子に変なもん見せたり襲いかかったりしてる暇があるなら自分磨きでもしなさいよ。そしたらそんなことしなくてもよくなるかもしれないでしょ。
まったく…男ってやつはこれだから嫌なのよね。

あっ、でもシンジは別よ?だってシンジはシンジだもん。嫌いじゃない。
…スケベなところは嫌だけどね。


「ねぇ、アスカ」

「えっ…な、何よ」

「今日さ、一緒に帰ろうか」

帰りのホームルームが終わって週番の仕事をしようと立ちあがったとき、学校にいるときはあんまり自分から話しかけてこないシンジがあたしに話しかけてきた。
それだけでも結構ビックリしたんだけど、一緒に帰ろうって言われてもっとビックリしたっつーかなんつーか…


…シンジのやつ、一体何考えてんの?そんなことしたらまたあたしの外見だけが好きなバカ達にいじめられるかもしれないってのに…ほんと何考えてんのよ。
少しはそこらへんのこと考えて行動しなさいよ、もう…


「…あたし、今日週番だから」

「うん、知ってる。待ってるよ」

「別にいいわよ。ひとりで帰「じゃあ、下駄箱のところで待ってるから。週番がんばってね、アスカ」」

「ち、ちょっと…待ちなさいよ!シンジっ!」

あたしが待ちなさいって言ってるのにシンジったら教室からさっさと出て行っちゃうし…もう、何なのよ!
…いくらあたし以外のやつがいるからって、いつもと態度が違いすぎなのよ…バカ…

だけど、こっちのシンジのほうがあたしは…


って、ヒカリ!「よかったわね、アスカ!」ってどういう意味よ!あたしは別にシンジのことなんか……あっ、レイ!今笑ったわね!?何笑ってんのよあんた!人の顔見て笑うなんて失礼じゃ……ちょっ、コラッ!逃げるな!戻ってこーい!

…ヒカリもレイもあたしの友達でとってもいい子なのよ。いい子なんだけど…なぜかあたしがシンジのことを好きだと思い込んでんのよね。
それがなきゃふたりとも最高なんだけどねぇ…はぁ…



結局、あたしはシンジが待ちくたびれて先に帰るように週番が終わったあとも教室で時間をつぶしてる。
あれから1時間も経ったしもう帰ったかしら?でも、30分以上前からずっと窓にもたれかかりながら外を見てるんだけど一向に通らないのよねぇ、シンジ。帰るには校庭を突っ切らないといけないのに。

…まさか、週番が終わる前に帰ったとか?な、なんてやつ!自分から待つって言ったくせに…!


「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してや……ビンタしてやるビンタしてやるビンタしてやる」

「アスカ、もう終わった?」

「ぎゃっ!」

「わっ!」

てっきり帰ったものだとばかり思ってたやつの声がすぐ後ろから聞こえてきたから、体がビクつくほどビックリしちゃったわよ…
つーか、何であんたもビックリしてんのよ…あんたがビックリさせたんじゃない。

ま、何はともあれ他に人がいなくてよかったわ。こんな醜態、他のやつには見せられないもの。


「あ、あんた帰ったんじゃなかったの…?」

「えっ、何で?アスカのことずっと待ってたよ?」

「そ、そう…」

「でも、なかなかこないからどうしたのかなって思ってきてみたんだけど…迷惑だった?」

「べ、別に迷惑じゃ……って、あんた!一体どういうつもりよ!」

「えっ?」

何で怒ってるの?って顔であたしを見るシンジに「一緒に帰ろうだなんて、あんたまたいじめられたいの!?」って詰め寄ると、シンジは「そ、そういうわけじゃないけど…」ってもじもじしだす。
で、この癖が出るってことはあたしには言いづらいことなのね…と思いつつ「じゃあ、何なのよ?何が目的で一緒に帰ろうなんて言ったのよ?」って再度詰め寄ると、観念したのかボソボソと話し始めた。

…えっ、「アスカちゃ…アスカが変質者に襲われたら嫌だから…それで僕も一緒に帰れば大丈夫だと思って…」ですって?
こいつ、あたしのこと心配して…


「は、はんっ!このあたしが変質者ごときに負けるわけないでしょ!」

「でも…」

「もう…大丈夫ったら大丈夫なの!それよりもあんたはあたしの心配より自分のこと心配しなさいよ!」

「……」

「ったく…明日からどうするの?また屋上とか体育館裏に「…僕はどうなってもいい」」

「はぁ?あんた何言って「ボコボコにされても、そのせいでひどいケガをしても僕はかまわない。でも、アスカはダメだ!アスカは傷付いちゃダメだ!アスカはきれいでいなくちゃダメなんだ!」」

めったにみせない真剣な顔のシンジがあたしの肩を両手で掴みながらそんなこと言うから…もう、何も言うことができない。
ほんとは何よそれ!って言いたかったんだけど、なぜか喉がカラカラで声が出なくて…

ねぇ、シンジ…何で?何であたしはダメなの?ねぇ…何で?






その日からあたしとシンジは一緒に帰るようになった









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