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夢をね、見たの。小さい頃の…シンジと初めて会ったときの夢を。



あたしとシンジが初めて会ったのは、あたしがシンジの家の隣に引っ越してきたときだから…4歳のときか。ママに「お隣の家にご挨拶しに行くからアスカもいらっしゃい」って言われてついて行った先にいたのがシンジだったのよ。
そのときのシンジはユイおばさまの後ろであたしのことをチラチラと見てたんだけど、あたしと目が合った途端ポカーンと口を開けて固まっちゃってね。それで結構長いことポカーンとしてるから心配になっておしゃべりに夢中なママとおばさまにシンジのことを言おうとしたときにシンジが大きな声で叫んだのよね。「おかあさん!おひめさまだよ!おひめさまがいる!」って。


ママは最初「見た目はお姫さまに見えるかもしれないけど中身は全然違うのよ」って笑ってたんだけど、シンジがあまりにもおひめさま!って興奮して言うもんだから最終的には「じゃあ、今日からこのお転婆お姫さまをよろしくね、シンジ王子」って言ってあたしのことをシンジに任せてまたユイおばさまと話し始めてさ。ま、子どもの相手をするのが面倒になったんでしょうね。
ユイおばさまのほうは「あら、シンジにそんな大役務まるかしら?」なんて言ってたけど、その大役を任されたシンジは「ぼくがおうじさま…?」ってまたしばらくのあいだポカーンとしてて、その様子にこれまた心配になったあたしがママとおばさまに…っつーやりとりが何回か続いたあと、シンジが「じゃあ、このこはぼくのおひめさまなんだね!やったぁ!」ってあたしの手を掴んでぐるぐると…


ってところで目が覚めたのよ。
このあとシンジにぐるぐるされすぎて目を回して倒れたのよね、確か。それでシンジが大泣きして……あっ、その大泣きしてるシンジを見てあたしは幼いながらにこいつは泣き虫だからあたしがしっかりしなきゃって思ったんだっけ。

懐かしいわねぇ…






「ねぇ、シンジ。あんたさ、今日何の夢見た?」

「えっ…ゆ、夢?」

「…そ、夢。ちなみにあたしはねぇ…」

のんびりと学校に向かいながら夢のことを話すあたしと明らかにホッとした顔をするシンジ。
あー…こいつ、いやらしい夢を見たのね。ま、シンジがどもった時点でそうなんじゃないかと思ってたけどね、あたしは。ふんっ。

…シンジのやつ、どんないやらしい夢を見たんだろ?


そ、それはともかくシンジに夢のことを話すと「あぁ、僕とアスカが初めて会った記念すべき日のことだね」って目をキラキラさせながらあたしに寄ってきてさぁ…
もう…記念すべき日って何よ記念すべき日って。ただ会っただけじゃない。なのに、そんな嬉しそうに目なんか輝かせちゃって。

ったく、そんな顔されたらこっちまで嬉しくなっちゃうじゃない…



「べ、別に記念にするようなことじゃ「あぁ…あのときのアスカは本当にかわいかったなぁ…」」

「何よ、その今はかわいくないみたいな言い方は!あたしは今でも十分かわいいわよ!」

「う、うん…そうだね。でも、今のアスカはかわいいって言うより…あの…き、きれいだと思う…よ?」

「…えっ!?」

「あっ…ぅ……や、やっぱり今のはなしで…聞かなかったことに…う、うぅ〜…」

シンジがあたしのことをきれいだって照れながら言った挙げ句何かうぅ〜って悶えだしたんだけど…正直、シンジの羞恥ポイントがいまいちよくわからない。
あたしのことをお姫さまって真顔で言えるくせに、何であたしにきれいって言うだけでそんなに恥ずかしがってんのよ?明らかにお姫さまって言うほうが恥ずかしいじゃない。

てか、そんなに恥ずかしそうにうーうー唸られたらあたしが恥ずかしがれないじゃないの!


……って、あっ!今の嘘!嘘嘘!あ、あたしは別に恥ずかしくなんかないわよ!だだだだってあたしがお姫さまみたいにきれいだってのは事実だし…それを今さら言われても別になんとも思わないわ!
だからシンジにお姫さまって言われて、さらにきれいって言われて頬が熱いとか…むしろ体中熱いとかそんなことないんだから!



「な、何恥ずかしがってんのよ!バカ!」

「だ、だって…」

「ったく、恥ずかしがるくらいなら言わなきゃいいのに……って、何よこれ!もうこんな時間!?」

「えっ?…あぁっ!ち、遅刻「シンジ!走るわよ!」」

「う、うん!」

話に夢中になりすぎていつの間にか道の真ん中で突っ立ってたあたし達だけど、何気なく見た腕時計が指す時間によってドタバタと走り出す。
皆勤賞狙ってんだから遅刻なんてできないのよ、あたしもシンジも!でも、シンジのやつ…足遅いのよね。つーわけで、仕方ないからシンジの手を掴む。


…べ、別にシンジと手を繋ぎたかったわけじゃないわよ。足が遅いシンジをこのクラス1足が速いアスカ様が引っ張ってやろうと思って掴んだだけなんだからね!



「ア、アスカぁ…」

「か、勘違いすんじゃないわよ!あたしはただ「い、痛いよ…そんなに強く握らないで…」」

「んなっ……そ、そのくらい我慢しなさいっ!」

「そんなぁ…」

「ふんっ!」

何よ、さっきまで恥ずかしがってたくせに!うぅ〜…って恥ずかしがってたくせに!なのに、何であたしに手を握られて恥ずかしがらないのよ!
ほら、恥ずかしがりなさいよ!ほっぺを真っ赤にしながら恥ずかしがりなさいよ!うぅ〜…ってしなさいよ!

あんたが恥ずかしがってくれないと、その…あ、あたしが困るのよ!もう!



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