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何の心境の変化か知らないけど、シンジがいろんなことにたいしてがんばり始めた。


具体的に何をがんばり始めたのかっつーと、まずは勉強ね。これまで可もなく不可もなくで適当にやってたってのに、今は割と頭がいいほうの渚と一緒に苦手な科目を重点的に勉強してんのよ。
ったく、いつも一緒に宿題やってんだからそのときにあたしが教えてあげるって言ってんのに「アスカちゃ…アスカに頼りっぱなしじゃダメだから」だってさ。もう…シンジのくせに生意気よね。

で、次に運動。運動が苦手でのんびり屋のシンジが体育を真面目に受けるようになったのよ。あと、昼休みには鈴原達と一緒にサッカーやバスケとかでバタバタと走り回るようにもなったのよね。
はじめは毎日どこかしら筋肉痛で動く度にうんうんうなってたけど、今はそんなこともないみたい。楽しそうに走り回っては転んでるわ。

それで、最後は…あたし離れ。ふたりでいるときでもあたしのことちゃん付けで呼ばなくなったのよね、あいつ。しかも、あんだけベタベタとあたしにくっついてたってのに今はそれもないし…
ま、シンジはあたしのお弁当やらご飯を作らなきゃいけないから完全にあたしから離れることはできないんだけどね!ふんっ!……って、ダメじゃないのそれ…



「…離れられないのはあたしのほうってか…」

「アスカ…?」

「えっ…あ、あー…ごめん、ちょっと考え事してた。で、何?」

「…あなた、寂しいの?」

どうしよう…レイが何を言いたいのかわからない。つーか、寂しいって何?そりゃあ、あたしもまだ14歳だから寂しいって思うこともあるけど…でも、今はレイがいるから寂しくなんかないわ。それなのに何でそんなこと……あっ、もしかして寂しい思いをしてるのは本当はレイのほう…?でも、それを認めるのは癪だからあたしに…


そう思ってレイに「もうシンジのことばっか考えないから…レイの話、ちゃんと聞くから…だから、その…寂しがらないで?ね?」って言ったら、レイがくすくすと笑いだしてもっとわからなくなったわ…
おかしいことなんか何も言ってないわよ、あたし…なのに、何でそんなに笑うのよ…



「ちょっとレ「私、寂しがってなんていないわ」」

「えっ、そうなの?」

「えぇ。だから碇くんのことばかり考えても大丈夫よ、アスカ」

「なっ…!?べ、別にシンジのことなんか考えてな「さっき「もうシンジのことばっか考えないから」って私に言ったのは誰…?」」

「あっ…いやっ…そ、それは…その……あっ!じ、実はそれ嘘なのよ!だから「ふふっ…相変わらず素直じゃないのね、あなたって」」

「くっ…」

レイに言い返せなくてぐぬぬってなってるあたしを見ながらくすくす笑うレイを見て、あたしは一生レイには勝てないんだろうなって改めて思う。つーか、レイに口で勝てるやつなんているの?人の痛いとこを突く天才であるこのレイに。ふんっ、いやしないわね。だってこのあたしですら太刀打ちできないんだから。
そんなことをふわふわと思うあたしにレイは「アスカ、寂しく思うことも誰かを想うことも悪いことではないわ」とさらに追い打ちをかける。

…何か今日のレイっていつにも増してよくわかんないわね。そんなの当たり前じゃない。
てか、そろそろ主語抜きで話すのやめてくれないかしら…



「えーと…つまり何?何が言いたいのよ?」

「ふふっ、あなた碇くんに甘えてもいいのよ」

「…は、はぁ!?何でこのあたしがシンジなんかに「だって、碇くんはそんなあなたのために変わろうとしてるのだから」」

「ちょっ…レイ!何あたしの話遮って意味わかんないこと言ってんのよ!つーか、あんたの言ってることに繋がりがなさすぎてほんとに意味わかんないんだけど!って、コラッ!レイ!逃げるな!」

本格的に意味のわからないことをわざわざあたしの話を遮ってまで言ったレイは、いつもなら考えられないような素早さであたしの前から去っていった。つまり、レイはこれ以上怒られたくないからあたしが本格的に怒る前にさっさと逃げだしたってことね。
…ったく、シンジに甘えろだなんてレイも何考えてんだか。まぁ、シンジが本当は幼児並みに甘えん坊だってことはあたししか知らないわけだし、レイが見当違いなことを言うのも仕方ないか。


……でも、いつかはあたしもシンジに甘えるようになるときが…って、ない!ないない!シンジに甘えられることはあってもシンジに甘えるだなんて、そんなことあるはずがないわ!
それに、シンジがあたしのために変わろうとしてるって何よ!シンジは今のままでいいの!わがままで甘えん坊であたしがいなきゃ何もできない、そんなダメな人間でいいのよ!

…って、何考えてんのよあたし…そんなのいいわけないじゃない…
でも、シンジにはあたしが必要で…だからあたしは…あたしは…




…あたしはシンジにどうなってほしいんだろう…?



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