シンジを無理やり引き離しても甘え癖は直らないってことがわかってからというもの、あたしとシンジはまた以前のように甘え甘えられな関係に戻った。
…ううん、戻ったんじゃない。前よりすごくなったかもしれない。だってシンジのやつ、家でするほどではないけど学校でもあたしに甘えだしたし、それにたまにみんなの前でもあたしのことアスカちゃんって呼ぶようになったし…


…引き離せば直るでしょって軽く考えてたときのあたしをぶん殴ってやりたいわ、ほんと…



あっ、そうそう!ぶん殴ってやりたいと言えばあいつ等よあいつ等!シンジがあたしに甘えるのを見てそれをからかってくる男子と、そんなあたし達を見ながらひそひそやってる女子!
何なのよあいつ等!自分が女子と手を繋げないからってシンジに八つ当たりしてんじゃないわよ!言いたいことがあるならひそひそしてないであたしに直接言いなさいよ!


ったく、思春期だからって意識しすぎなのよ!バカ!
つーか、あたしとシンジが何しようとあんた達には関係ないでしょ!バカバカ!



「アスカちゃん…怒ってる?」

「…別に怒ってないわよ」

「ほんと…?でも「そんなことより、このマンガの続きってないの?続き読みたいんだけど」」

「あっ、うん!あるよ!持ってくるね!」

自分ではこのイライラを顔に出してないつもりだったんだけど、あたしのことに関しては敏感なシンジにはバレちゃったみたい。ま、うまく話を中断させたからこれ以上そのことについて何か言ってくることはないだろうけど。
というわけで、あたしはシンジの部屋のベッドに寝っ転がってマンガを読んでる。シンジの部屋にはマンガがいっぱいあるからたまにこうやって読みにくるのよ。それ以外ではめったにこないわ。

だって、何か変なにおいがするんだもん…シンジの部屋って…



ちなみにあたしがマンガを読んでるあいだ、シンジはシンジでベッドに寝っ転がってマンガを読んでる。つまり、あたしの隣であたしと同じことをしてるってわけ。
もう何度「邪魔!あっち行って!」って言ったことか…そして、何度その度に「やだ!」ってあたしの上に乗ってくるシンジの重さに負けて「わ、わかったから…早くあたしの上から降りて…」って言ったことか…


これはもうベッドでマンガを読むのをやめろってこと?そんなの嫌よ!あたしはマンガは寝転がって読む派なんだから…!



「ちょっとシン「はい、アスカちゃん」」

「えっ?あ、あー…ありがとう」

「どういたしまして。それでね、アスカちゃん。さっきの続きなんだけど…」

何かうまく遮られたような…でもまぁ、あたしがまた「あんたは違うとこで読みなさい!」って言ったところでこれまた「やだ!」って言われて上に乗っかられるだけだろうし遮られてよかったのかもね。
さて、そんなことよりマンガマンガっと。続きが気になってたのよね。


…そういえば、さっきの続きってなんだろ?もしかして、シンジのやつあたしがマンガ読んでるあいだずっとあたしに話しかけてたとか…?
うわぁ…あたし、マンガに夢中で全然聞いてなかったんだけど…

……ま、いいか!こんなときに話しかけてくるシンジが悪いってことで!



「あのね、婚約指輪のことなんだけど…高校生になるまで待ってくれないかな?」

「ん」

「えっ、ほんと!?ありがとうアスカちゃん!僕、高校生になったらアルバイトたくさんするよ!アスカちゃんに似合う婚約指輪を買うために、僕がんばるよ!」

「…ん」

「それで、18歳になったら結婚指輪!婚約指輪も結婚指輪も一緒に買いに行こうね、アスカちゃん!」

「……ん」

こ、こいつ…ただでさえシングルベッドにふたりでいて狭いってのに、あたしのほうにぐいぐい体を押しつけてきやがった!そんなことしたら壁とシンジに挟まれて苦しいじゃない!
あと、何かわーわー騒いでるけどなんなのよ!うるさいわね!人の隣で騒がないでよ!

ったく、このマンガ読み終わったら説教してやるんだからね!



「あとは結婚式場もふたりで決めてウエディングドレスも……あぁ…アスカちゃんのウエディングドレス姿、すっごくきれいなんだろうなぁ…早く見たいなぁ…」

「ん」

「ねっ、早く結婚したいね!」

「ん…」

「それでそのあとは…その…あ、赤ちゃんも…ね?」

「ん……」

…我慢よ、今は我慢するのよアスカ。もう少しで読み終わるからそれまでの辛抱よ。大丈夫、あたしならできるわ。大丈夫大丈夫。
………ぁあっ!やっぱり無理!我慢できない!狭い!苦しい!シンジの息づかいが荒くなってきてる!体も熱い!いやぁっ!

でも、マンガの続きも気になる!シンジのことも気になるけどそれ以上に続きが気になる!今いいところなのよ!


あぁん!どうすりゃいいのよ、もう…!



「あっ…でも赤ちゃんは僕が就職したあとじゃないと無理、だよね…」

「…ん…」

「べ、別にアスカちゃんがいいなら高校を卒業したあとでも全然いいよ!だけど…大丈夫かな。僕、自信ないよ…」

「……ん……」

「あっ、そうか。自信がないならその自信をつければいいんだね。うん、わかったよアスカちゃん!アスカちゃんやいつか産まれてくる赤ちゃんのためにも、僕がんばるよ!がんばってアスカちゃんと赤ちゃんにふさわしい男になるよ…!」

「………ん………」

結局、読み終わったあとに延々と説教してやったわけだけど、シンジのやついつもと違ってずっとキリッとした顔であたしのこと見てたのよね…しかも、説教が終わったあともキリッとしてるから調子が狂うっつーかなんつーか…

あたしがマンガ読んでるあいだに何かあったのかしら…?




[ 9/13 ]




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -