(セラサクセラ)
絶対に掴めないことは自覚してるはずなのに、時々縮まったように錯覚する距離に酔いそうになる。
調子に乗って届こうと背伸びをすればやっぱり届かなくてコケる。
身長差もそれを体現しているようで、コンプレックスが新しい形で苦痛を生んだ。
それでも、見掛けるだけでテンション上がるし、
「おい、お前な」
こうやって向こうから絡んでくれた時なんか嫌なことも全部ブッ飛ぶくらいで、
「まーたンなモン食いやがって。こっちの身にもなれよな、ったく…」
どんな選択をすれば最も誰も傷つかないかなんてことは、俺自身が一番分かってんだよ。
「っ堺さん」
本当で、本当に、
「俺っ!」
(それでも俺は、)
開きかけた唇、しかし声帯は運動を躊躇ったまま。
「あ?何だよ」
眉を寄せたまま振り返った彼を見て、音にならない言葉は空を切った。
「……えーっと、忘れたッス」
「はぁ?」
とっさに上手い言い訳が浮かばない頭を恨む。
昔から口論で勝ったことがない。
(とおいのかな)
泣きそうなくらいに欲しいんです、貴方が。