(ジノザキ・赤崎視点)
予想しやすいようでいてどこか掴みどころがない。
考えてみれば案外、謎が多い。
高級ネコかっつーぐらいに気取り屋で気分屋。
目が合うと、ちょっと嬉しい。
全部夢だったらいいのにとさえ思った。
かき回されるのも一方的な甘い言葉も、癪で。
なんで俺がいつもイライラしてなきゃいけないのか。
綺麗事は好きじゃないし世の中勝ったモン勝ちだと思ってる。
でもフェアじゃないことは嫌いだ。
「バッキー!」
―――なんで、俺ばっかり。
飛ばされた球体は、上手い具合に椿に収まりそのままゴールに向かって蹴り出される。
馬鹿正直すぎたんじゃないかと思ったコースラインでも運良く決まった。
しかし実際の試合ならこう簡単には行かなかっただろう。
「あはははーっ!ねぇタッツミー、次は僕がシュートしてもいいかな」
「いや…俺に聞かれても」
「予告してんじゃねーよ王子!」
気に入らない。
しつこいかと思えば、こちらが追いかけるとするりと逃げたり。
それも全て偶然なようで意図的な。
ムカつくんだよ。とにかく。
全部夢だったらいいのにとさえ思った。
でも、夢なら少し醒めるのが勿体ない気もした。