(星カン)





きらきら

きらきら

毎日が眩しいのは、
絶対にあなたのおかげだと思うのです。


「何ノ本読ンデルカー?」

「うわっ、いきなり現れんな!」

「コノ部屋ニハワタシトホシノダケネ」


にっこりと笑いかけると、どこか気まずそうに視線を泳がせる。

本は背中に隠されてしまった。
ひょいと覗き込もうと首を伸ばせば、それを避けるように更に体をひねられる。


「面白くねーよ」

「エッチナ本デスカ」

「ちっっっげぇ」

「見セテヨー」

「お前は充分間に合ってるだろ」

「………」

ときどき、日本語を駆使して誤魔化されるのが
少し辛いのだけど、星野はそんなこと知らないのだろう。


僕は腹いせに、強行突破で何の本か確かめることにした。


「セイヤー!!」

「なっ…!?」


がばりと。

星野に抱きついた。


星野の硬いお腹にぐりぐり頭をこすりつけると、思惑通り星野は動揺して本を隠す手を緩め、代わりに僕の頭に手を置いた。


(甘イネ、ホシノ!)

その隙に、さっと小さな厚みのある文庫本のような本を取り上げる。

「あ゛っ」と星野が声を上げて慌てて取り返しにかかるが、それよりも素早く体を翻し表紙を読み上げた。


「即上達ハングル……?」

「ああぁぁぁぁ〜…………」



諦めたような諦めきれてないような変な声を上げながら、星野は額を押さえている。

本の表紙には、見覚えがあるどころか慣れ親しんだ祖国の文字。


「ホシノ、ワタシノ国ノ言葉勉強シル?」

「しるじゃなくてするだ」

「ドウシテー?知リタイナラワタシ教エルヨ」


何をコソコソする必要があるのか。というかむしろ、彼が僕のとこの文化を知ろうとしてくれているなんてかなり喜ばしい事実だ。

言ってくれれば、いくらでも先生になるのに。


「いや…お前が頑張ってるの見てたら…感化されたっつうか…」

「カンカッテナニー!?」

「感化ってのはな、えっと……めんどくせぇ……影響されるみたいな意味だ」

「ホシノハワタシニ影響サレタ?」

「そんなとこだ。もういいだろ」


バシッと本を取り上げられた。


怒ったように照れる彼をまじまじと見つめると、軽く睨み返してくる。
こういうの、えーと、『逆ギレ』って言うんじゃなかったかな。
星野は照れた時によくそれをするのだ。と、八谷が言っていた。



この状態では何か言ってもほとんど突っぱねられてしまうので、黙って先程の星野の言葉を反芻する。


僕にカンカされた。
僕のとこの言葉を知ろうとしてくれた。


改めて思う。

やっぱりあなたなしではつまらない。
僕だって、あなたにカンカされていることはきっとたくさんあるのだ。


すごく納得できる結論が出たところで、口で教える代わりにへにゃりと彼に笑いかける。

ああほら、呆れたような驚いたような、幸せそうな顔で、温かい手が伸びてきた。


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