take7
掴みどころがないところが素敵、というのは女性から散々言われてきたことであるけれど
僕自身、一番捕まえておきたい相手を逃がしてばかりだ。
「ねぇ、一昨日コンパに行ったんだってね」
「それが何スか?」
あれ、機嫌が悪い。
ざわつく胸を悟られないよう必死で繕う。
いつからだったろう、いつも窺ってるのは僕の方だ。なんだかひどく昔からのような気がした。それこそ、樹木の寿命並みに。
距離を計りかねる。ねえ、こんなの初めてなんだよ、
「付き合いで行っただけ。別にアンタに迷惑かけてないでしょ」
「そういうんじゃないよ」
せめて、穏便な空気を保っていたいのに。
(焦ったら駄目だ)
どうしたらいいのか分からない、欲しい、大切にしたい、愛してる。
「楽しかった?」
「あぁーもう、何なんスか!」
「ただの世間話じゃないか」
下心なんてどうせ目に見えないんだから、いくら持ったって構わないだろう?
「ねえ、楽しかったの?」
「…………、」
知らず口振りが速まって、しまったと思った。
「楽しかったですよ。そりゃーもう」
「……へえ」
「2人とメアド交換しました。代表効果っスかね」
傷付くなんて身勝手だ。
資格もない、けれど。
振りをするのも楽じゃない。