take4(これの続きっぽい)


今になって震えてきた手をぎゅっと握って、顔に上る血液の熱さや羞恥心諸々を振り払うようにずんずか歩いた。

本当なら先生の反応を見るつもりだったのに思わずとっさに嘘をついて出てきてしまった。


「次の電車まであと一時間……」


田舎は電車の本数が少ないから困る。

iPodのイヤフォンを耳に挿して、陰鬱さを押し留めようとした。




どうやって辿り着いたかも覚えていない駅の待合室に腰をかけた。
そんな状態でもここまで歩いてきたのは、自分でも感心するが。
イヤフォンからの音は、全然頭に入ってこない。


(伝え損だ。)



目的が果たせないままただ恥ずかしい思いをした。
何ということもなく、さらりと言ってのけるはずだった。

それなのにいざ言おうとしたら、手汗なんかかいてしまって、プリントに印刷された文字たちが浮かび上がって勝手に蠢いているような幻覚まで見えるようになって、先生の顔なんか、見れる状態じゃなかった。


…それにしても、伝え損てのはおかしいか。
だって、伝えるって、何をだ。



先生は引いたりしてないだろうか。

愛想がいい割にあっさり突き放すような所があるから。
ああでも、もしかしたら生徒から好きなんて言われるのは慣れてるから平気だろうか。


そうだ、俺がさっき言ったのも幾多飛び交う好意の中の一つに過ぎない。


過ぎない?


なら、どうして引かれるかもなんて心配する必要があるんだ?
俺の言葉も、放課後の時間も、先生にとっては膨張する日常のスキマに埋もれる存在のはずだろう。


喉が詰まったようにきゅんと痛んだ。


ていうか、なんでこんなに先生のこと考察してんの。

(……いつも見てるから。)





簡単に口に出すべきじゃなかった。

手汗をかき始めた辺りで躊躇してしまえばよかったのに。
残ったのは後悔だけだ、墓穴を掘ったってことか。

力が入らない手でくしゃりと髪を掴む。



(『すき』の二文字は、思いの外重かった、)







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地元の感覚で電車のこと考えてたら東京は数分置きに来るんだって思い出して無理やり田舎設定にしてしまいました。友情出演でセラサクも出したんですが長くなってしまうため、削除(笑

解説。ちょづいた結果、言ってから自分が口にした言葉の重さを(色々な意味で)知る赤崎くんでした。彼が自覚するのも、発展するのも、それはまた別のお話。
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