take1
用意された3つの中に思わしい選択肢がないとしたら。
隠れ4番を勝手に発動。
王子とは、そういう人だった。
(ほんとわけわかんねー)
隠れ4番、というより、捏造4番と言った方が語弊がないかもしれない。
パンがないならケーキを食べればいいじゃない。
民の苦しみを知らずしてそんな言葉を遺した彼女ではないが、気に入るものがないと新たに道を拓いてしまう、否拓く力があるのだ。
敵には回せないと、本能で悟った。
俺は飲み込まれないぞ。
ギンと睨みつけると、驚いたように少し目を見開いた。
なんだ、間抜けな顔。
「ザッキー、穴が空いちゃうよ」
大袈裟に肩を竦めて見せる。
そんな仕草でも、ハーフというのは違和感なくこなしてしまうのか。
羨ましくはないけど。
「チップでも欲しいの?」
「はァ……別にいりませんよ」
(威嚇でもしていないと流されてしまいそうだなんて、そんなことは決して、)
「あっはは!唸りながら尻尾振ってるんだから君って…」
「指ささないで下さい!」
顔が熱くなってきたから、怒ってる振りをした。
いやだ、いやだ、このままじゃ流されてしまう、
「僕がフリスビーを投げたら絶対取りに行くクセに!素直じゃないね」
「……アンタなんか!」
その先は口をぱくぱくさせるも声が出なくって、まさに尻尾を巻いて逃げた状態。
体中がチクチクとかゆくなり、帰る早々浴びたシャワー中の頭は、明日合わせる顔のシミュレーションでいっぱいだった。