(サカヒラ・坂元さん独白)





無性にその手を握りたくなる瞬間がある。たおやかではないけれど温かくて案外小さい手に自分の手を重ねて、見えない何かを共有した気になる。安心したいわけじゃない。合わせた手のひらから余計なことまで漏れはしないかと、よく分からない不安に駆られたけれど無視した。あまりに沈黙が続くとそこだけに意識が集中して相手の脈動さえ感じた。俺たちヒトは窮屈な皮膚一枚に囲われてなきゃいけないからあんたとも何かしらに隔てられてなきゃいけないんだ。破ろうと思えば破れるけどさ。昔、インドのある思想家は人間は細胞の集まりだから刀で切っても細胞の間を刃が通り抜けただけで殺したことにはならないと言ったそうだ。だけど実際切ったら、痛いし血が出るし死ぬこともあるだろう。だからくっついてるだけでいい。キャプテンは多くは語らない、俺も多くは望まない。




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