(ガミタン)
分かりきったことだらけなのに感動が絶えない。
「いーち、にーぃ、……さーん、」
そして今日も確認作業。
指で辿る黒子の数が、毎度同じであることに安心するのだ。
まるでYシャツに口紅の跡でも探るみたいだ。と、思った。
「100個目の黒子を数えた時何かが起こる」
「アホだろお前」
暇を持て余したらしくくだらないことを言い始めたのを軽くあしらうと、少し拗ねたのが空気で分かった。
浮き出た肩甲骨に吸い付いて、満足げに口角を上げる。
はい、最後の1つっと。
「まず100個もねぇよ」
「じゃあ何個?」
「17」
「うそ、そんなに」
「地肌とか自分じゃ見えないからな」
「………」
いつから始まったか分からないけれど行為後の恒例行事である黒子カウントは、今まで幾度となく繰り返されてきたはずなのに数を聞き返されたことはなかった。
考えてみれば不思議だ。
数えた回数、イコール、今までしてきたセックスの回数、マイナス、数えてない回数。
引かれる数も引く数も分からない、つまり答えも分からない、それこそ数えようと思わない。
「丹さん」
「ん?」
ぐいっと首を捻り見つめてくる目は、感心と好奇心にまみれていた。
「俺よか俺のこと知ってるんスね」
「かもね」
「それより丹さん」
自分から話題振ったのに「それより」って。
もう慣れたけど。
「丹さんが変なことするから、もっかいしたくなったんスけど」
どうやら背中にキスしたことを言っているらしい。
正直気分じゃなかったのに、抵抗も面倒で相手してやったのは、俺がこいつに甘いということ、なんだと、思った。