(ジノザキジノ)
「そんなに不安なら、花占いでもする?」
細い指が赤黒いチョコレートコスモスを一輪摘み取った。
なんで、あんたはそんなに、楽しそうなんだ。
「それ。いいんスか」
「いいんだよ、僕のプランターだもの」
影が出来るほど長い睫に縁取られた瞳は恐ろしく深い。さながら迷路かブラックホールだ。
踏み入ったが最後、ひたすら廻り巡る。
脳が痙攣でも起こしているのかもしれない。
考えようとすると、思考は水揚げされた鮮魚のようにびくびくと覚束ない。
本当に、迷い込んでしまったのだろうか。
(嘘、本当、嘘、本当、嘘、本当、)
一枚ずつ毟られていく花弁に目を当てられなくなった。
なんだかすごく、痛そうで。