(サカヒラ・キャラ崩壊注意)
敬語を使うのは苦手なのだと言った。
一緒にいると、時々タメ口が混じる。
「また増えたな、熊」
「テディベアね。うん、増えた」
坂元は可愛いものが好きだ。
家具が黒で統一された部屋の所々には、ぬいぐるみが見え隠れしている。
ファンシー趣味というよりかは、フェミニンなロマンチストなのだと思う。
その口は、存外甘いものを好み、甘い言葉を吐く。
「ほら、こいつ」
「そのブサグマがどうしたんだ」
「似てないスか?」
「何に」
小指の爪が伸びている。
坂元が頬を寄せた熊はなんだか不細工だった。
管理しきれていないせいで鋭利な葉の先が茶色く枯れている観葉植物。
今からでも水を与えたら蘇るだろうか。
「平賀さんに」
蛍光灯が一度だけ点滅した。
「っあ…?」
「かわいいでしょ?こいつ」
室内との温度差で曇っている窓の外の空気は冬色に染まっていく。
ツンと鼻にくるほど澄んでいて、なけなしの老いた体温なんかあっという間に奪われてしまう。
そもそも、幼い頃から寒いのは苦手なのだ。
「動物園さ、お別れ会あるんだって」
「お別れ会?」
「冬籠もりする動物たちの見納めの日」
「…まさか、行くってんじゃないだろうな」
考え倦ねて裏をかいた結果結局表になるというのはよくある話だ。
予想できるのは、『予想の範疇を超える』ということだけ。
(ゾウって冬眠するっけかな)
(おい、本気で行くつもりかよ)
(たまにはデートしませんか)