(タツバキ・糖度高め)
こっくりこっくり。揺れる黒い頭。
「おーい椿ー?」
「っ、はい…」
名前を呼ばれてはっと返事をするも、虚ろな目とふぬけた声じゃ説得力がない。
「眠いの」
「いえ、起きて、まふ」
「まぁ眠ってるようにゃ見えないけどね」
おいおい。
呂律も回ってないじゃんよ。
せっかく2人で過ごせる時間なのにという気持ちもあるが、こいつが自分の前で眠そうにしているのは安心している証拠だと考えると嬉しくもある。
「んー……」
「無理しなくていんだよ」
「だって、もったいな」
思いのほか大胆発言に目を見開く間に
くあ、と可愛らしい噛み殺したあくびが漏れる。
口元が緩むのは不可抗力っつーことで。
「寝ていーよ」
「ちが、だから」
「いーって。俺も寝る」
「え?」
眠いせいか珍しく駄々をこねそうになる椿をベッドの上に引っ張って、ついでに毛布も引っ張って、日に焼けて少し傷んだもみ上げの指通りを楽しむ。
すっと目を細めた椿に微笑んでから目を閉じた。
ベッドが狭くてラッキーとか。
たまにはこういう日があってもいいかとか。
すでに眠くなっている椿の体温に俺も眠りを誘われて意識が完全に堕ちる前にきゅっと手を繋いだ。
夢でも会えたら、これ幸い。