(赤崎の自慰・相手は想像によりけり)
あの人の手。
意外と器用で厭らしい手。
「ん…っ、く」
つつ、と指で裏筋を撫で上げれば下腹が震えた。
細胞の一つ一つが過敏になって、自分でも恐くなるくらい、でもそれも一瞬で忘れてしまうほどの集中力。
情事中の、声、息遣い、
思い出して、一気に上り詰める。
「あぁ、…っは、くそ」
足りねぇ。
現実に引き戻すように冷たい壁の温度を振り払って、濡れない其処に手を伸ばす。
指先が少し触れて躊躇ったけれど、乱暴にそのまま差し入れた。
乾いた吐息が漏れる。
痛みで上半身を支える腕に力が入らなくなり肘をついた所で、ふと冷静になった。
ギシギシした痛みと、物足らない焦燥感に、うんざりしたから。
指を曲げてみても見つからない。
ここには誰もいない。
こんな体が、ほんの暫時でも寂しいと思ってしまったことが、悔しくて堪らない。
「…んでだよ、畜生」
続ける気にもなれなくてローションティッシュの箱に手を伸ばす。
柄にもなく、寒いなんて思ったりして。