(タツバキ)






其処だけ、他所と明らかに違う熱を持って、理性を揺さぶってくる。


(大概俺もどうかしてるよね)



腫れた脚に欲情するなんてさ。



「ぁ、や…痛」

「………」


いや。
こーゆー可愛い痛がり方をするこいつも悪いと思うんだよね。

ついついさ。思い出しちゃうじゃん?


「ちょ、…監督!」

触れる度にビクビク反応するから思わず夢中になってたら。
堪えきれなくなった椿の制止が入る。

椿の足を触っていた手がぱしっと掴まれた。


「痛いんですけど」

「はは、ごめん」


そりゃそうだよな。
腫れてるとこ触ってんだから。


もちろんいじめたいわけではないのだが、どうにも、俺は自分が思っている以上に興奮しているらしい。


「…!?」


そろりと再び脚に手を這わせば、確かな熱がじんと伝わりビクリと脚が跳ねる。

それと同時に椿の眉間にも皺が寄り
その目は次の手の動きを窺った。

決して痛くしたいわけではないので(というより反応を楽しむのが目的なのだ)、やわやわと刺激を与えていく。


ちょうど、愛撫するみたいに。


椿の顔をこっそり覗き見ると、徐々に顔が赤くなってきていて。


「かんと、っぅ、」

「何?」

「あし、みせてほしいって」

「うん。言ったねぇ」


こいつといるとどうしても追い詰めたくなってしまう。
それも如何せん、椿が追い詰められた時に可愛い顔をするのがいけないんだが。


「見るだけじゃ、…っ」


なんてね。

監督の俺がわざわざ怪我した各選手にこうやって施したりするとでも思ったか?

全部お前を連れ込む口実だというのに、それにも気付かないのか。可愛いやつ。


「ん?」

「何してっ、んスか!」


何って、脚にキスだけど。

平然と答えると、いよいよ真っ赤になった椿が目を見開く。
うーん。そろそろやめとくか。


「はいオシマイ。湿布貼って寝りゃ治るよ」

「…え」

「ただの虫さされだから、それ」

「ええぇっ」


でも確かに痛くて、虫さされは痒いのだけじゃねーんだよ、もう涼しくなったのに、この季節まで生き延びてんだから屈強な蚊なんだろうな、よく見りゃ刺し口あるよ、

まだ腑に落ちない顔をしている椿は、そろそろと目線を上げた。


「たかが虫さされで、なんであんな……」


そこまで言って潤んだ視線を泳がせ、唇をきゅっと結んだ。


「ムヒ塗っときます。あざっした」

「あい、お疲れ。腹は隠して寝ろよ」


ぺこりと頭を下げ、椿が出て行った。


(あとで謝っとこう)




(その時のリアクションが楽しみだ)




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