▼鏡の前の問答話

「君は一体誰なんだい?」

にこにこと笑いながら言うその人物は、表情こそ笑っているが、その言葉に意地悪く棘を孕ませている。否、普通の者からしてみればその言葉すら純真で無垢な問い掛けにしか聞こえないのだろう。それの中身が分かってしまうのは、単に自分が彼と同一の存在であり、対極の存在であり、過去と未来の存在であるからだ。
さて、彼のその意地の悪い問い掛けだが、自分は生憎とその答えを持ち合わせていなかった。まだ右も左も分からない自分に、何と意地の悪い質問なのだろうか。分かっていてやるところが更に性格が悪い。内心楽しくてしょうがないのだ。
はぁ、と一つ溜息を吐く。

「これから探してくるよ」

だから、首を洗って待ってなよ。
言うと、また彼は嬉しそうに目を細めてそれはそれは美しく笑うのであった。

2012/02/26 15:34 (0)

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