▼思いついたとこだけ

「……その子供は?」

ふとその腕に愛おしげに抱かれた子供に目が留まった。服装からすれば少女だろう。死んでしまっているのかと思うほど、ピクリとも動かなかったが、よくよく見れば小さく胸が上下している。寝ているだけなのだろう。

「嗚呼、先程見つけてね。どうだい、とても可愛らしいだろう」

見つけたからどうしたと言うのだ。可愛らしかったからと言って勝手に拾って来たのか。今頃親も心配しているだろう、可哀相に。これだから上級の神は好きになれない。そんな内心を隠して取り敢えず曖昧に笑い返しておく。

「――近くで見ても?」
「ああ、構わないよ」

許可を貰って彼に近付く――許可も無く彼に近付けば斬首ものだ。これだから上級の神は面倒だ――と、腕の中の子供がスヤスヤと寝息を立てているのがよく聞こえた。しかしこの神に抱かれても何とも無いとは。中々の力を持った子供だな、などと思っていると、ぱちり、とその両目が開かれたものだから驚いた。段々とその焦点が合い、目線がかち合った。

「おにいちゃん……だれ……?」
「これは私の下僕だよ。おはよう、私の可愛いるいな」

神が愛おしげに子供を撫でる。これって何だ。オレのことか。オレはいつお前の下僕になったんだ、と言いたいことは山ほどあったが顔に出すのもぐっと堪えた。

「るいな……とは、この子供の名ですか」
「そう、この子の親が呼んでいたのだがね。私が名を決めるまではそれを使っているが、いずれは名を授けてやらねば」

人間の付けた名など、この子には相応しくないからね、と楽しそうに神は笑いながら言った。
この神は本気でこの子供を手に入れるつもりなのだろう。嗚呼、可哀相に。いずれ家族のことも、自分が人間だったことも忘れてこの神の愛を一身に受けるのだ。壊れるまで、飽きられるまで、ずっとずっと。

「おにいちゃん、だあれ?」

その子供の言葉に、ピク、と神の眉が僅かに動いたのが分かった。

「……私は、私を形容する名を持ち合わせていません。なのでその質問にはお答え出来ません」
「そう、此奴の名は私が持っているのだよ、るいな」

どうだ凄いだろう?とでも言いたげな神のその様子を視界の端に捉えながら、笑みを浮かべて言うと、子供は不思議そうに首を傾げたかと思えば彼の手を取って、

「ここにあるのに?」

と言ってのけた。
これには驚いた。勿論ポーカーフェイスは崩さなかったが。
神には意味が分からないようで、それではもう一度昼寝でもするか、と腕の中の子供を寝かしつけにかかり始めた。


*


「オレが差し出したのは偽名、って言っちゃあアレだけど。今一番気に入ってる名前だからね。……《神》も堕ちたものだな」
「……貴、様は……」


*


「ごめんな。オレには元の時間、元の場所に戻してあげるだけの力はもう無いんだ」

そっと子供の頭を撫でてやる。相変わらず穏やかな寝顔だった。その瞼がふ、と持ち上がる。まだ焦点がぼんやりしているようで、自らの瞼を擦っていた。

「う……ん、おにいちゃん……?」
「るいな。約束しよう」
「やく、そく……」
「そう。また、いずれ会ったら――」



いつか決まったらちゃんと書きたい。

2012/02/05 14:29 (0)

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