01 ここは『日本』 日付としては、平成2000年代。その辺りが曖昧なのは、前世界での自分が生きていた日付と比べてかなりの年月が経ってしまっているからだろうか…時間の感覚が曖昧だ。 僕は、いや、僕たちは、何故かここで新たな人生を生きている。 自身の子孫の中で、皆の記憶を照らし合わせ、一番若い僕の子孫である徐倫の談によると、 現在と同じ、2000年代、僕らにとっての『前世界』で、プッチ神父という人物との戦った後ふと、気付けばコチラの世界の自室で目を覚まし、気付けば僕らと生活をしていた。と言った感じであった。 これは皆共通しているようで、大体皆死んでから、気付いたらコチラに、と言った様子で、しかも前世界での死んだ年齢にズレがあるせいか、コチラに来た時間は皆大体同じなのに、皆の持っている記憶が混んがらがって、整理するのがとても大変だった。 特に承太郎や徐倫はここが一巡後の世界と呼ばれる世界ではないかと疑っていたようだが、本人達が満足するまで調べあげて、ようやく違うと納得出来たようだった。 後の共通事項は、年齢が、若返ったりしている事、だろうか…特に顕著なのは、自身の孫にあたるジョセフであるらしい。ジョセフの孫である承太郎、その子供である仗助の談によると、『誰だお前』らしい。 前世界では90代のお爺ちゃんだったのに、この世界に来て、一気に20歳の青年に若返ったジョセフは、口調の調節に一番苦労していた。一方でワシ、と言えば 『その見た目でじじぃ言葉使ってんじゃねぇぞ』 と承太郎に眉をしかめられ、逆に俺、と言えば 『じじいが俺って何か違和感あるなぁ、無駄に若いし』 と息子に苦笑され 「じゃぁどうすりゃ良いんじゃ!?って言うか、仗助くん、無駄にってなんじゃ!!」 と喚いていた。そのやり取りが、とても微笑ましかったなぁと思い出しつつ、結局、見た目を考慮して『俺』で落ち着いたが、たまにボロが出て、おじいさん言葉になったりしている。 しかもこの世界では、僕らの『関係性』も大きく違ってしまっている。 例えば、僕とジョセフは、記憶上の関係は祖父と孫の関係だが、 現在は僕が長男で、ジョセフが次男、ジョセフの孫である承太郎がその弟で三男、ジョセフの息子である仗助が四男、承太郎の娘である徐倫が長女、五人兄弟になっている。 父は前の世界の僕の父、ジョージ・ジョースター、母は昔に他界していて、前世界の母では無く、黒髪の美しい日本人女性だった。父さんには前世界での記憶は無いで、そもそも確認しようにも、有名な企業の社長であるらしく、現在世界中を飛び回っていて、今は、家を僕らに預けて、後、半年程は帰って来ないと言う状況だ。 後、僕らが自身を兄弟だと何故認識出来たのかと言うと、家の中にあった戸籍表やアルバム、その他、学生証や身分証と言ったものを掘り出して全員で確認した結果だった。 そこで分かった事だが、前世界の息子にあたるジョージ二世は僕と同い年の従兄弟である事が判明したが、遠くに住む親戚なので、今の所は会うことが出来ていない。 調べた結果、僕は考古学を専攻している大学生で、ジョセフ、承太郎が高校生、仗助、徐倫が中学生。 一応親戚で纏まってはいるものの、この通り、前世界とは大きく関係性が違う。 ジョセフの一人称もそうだが、僕らは、お互いの呼び名をどうするかまで相談しなくてはならなくなった。 父の動向については、家の留守電話サービスや、毎週届く手紙等で確認する事が出来た。 ちなみに、この世界での生活の仕方、金銭の数え方、などは、主に承太郎と仗助が、若者文化などについては徐倫が大体教えてくれた。前世界と生きていた時代と年月が同じだからだろうか、徐倫はここに来てから一番皆を助けてくれている。電子機器なんて僕の生きていた時代には全く無かったから、驚く事ばかりだ。 それから、この世界では波紋や幽波紋(スタンド)の能力が使えない。僕はスタンドの事は良く分からないが、僕が死んで、ジョセフが老いて以降出てきた。人の精神を具現化したような物、であるそうだ。 ただ、使えないと言うのは、完全に使えなくなった。と言う訳では無くて…『場所』に指定があるようだ。 家族全員で調べて見た結果、主に山奥とか、人通りの無い海とか、道路とか…一般住民に迷惑をかけないような場所でなら大丈夫なようであった。これが判明して以降、僕らは常に使っていた能力を、自由自在に使える事が出来なくなってしまったので、大変苦労した。 関係性や世界観、様々な物が大きく変わって戸惑う事も多いけれど、今の生活は、以外と楽しい。 自身の子孫達は、贔屓目無しで見てもカッコよくて可愛いと思う。僕の子孫or兄弟達は僕の自慢だ。 生きていたら出会えた筈だった孫のジョセフも、分かりにくいけれど、たまに甘えてくれたりして、こういう何でも無い幸福が欲しかったんだよなぁ、何て、思ったりして。 でも、僕らにはこの世界に来て、少々不安な事もある。 前世界での仲間や敵達にまだ一向に出会えていないのだ。僕らがいると言うことは、彼らも必ずどこかにいると思っているのだが…。しかも、僕らの両親のように記憶が無ければ良いが、記憶がある人達はここでの生活をどうすれば良いのか、大分困ると思うし、出来るなら助けになってあげたいと思う。 まぁ、敵達には会えない方が良いと思ったりもするのだが…やはり、僕は彼の…ディオの行方が気になって仕方が無い。何故かと言うと…僕らが身分を確認する為に掘り出して来たアルバムなどを見返して見ると、そこには必ず…。 「ディオ…」 ディオの姿がいる事だ。正直、ジョナサン・ジョースターとしての精神が目を覚ましたのはつい最近だ。 この世界にはそれまで生きてきたジョナサンが確かに存在する訳で、元からいた人物の精神を乗っ取ってしまった。もしくは魂が入れ替わってしまった。色々と考えられる事はあるけれど、この写真で明確に分かる事は、僕らはこの世界で既にコンタクトを取っていて、しかも親しい仲だ。と言う事だ。 少々疑問なのは…ディオは僕に振り回されつつ、何だかんだと世話を焼いてしまう少年、と言ったような写真が多い。 僕に手を惹かれて不服そうな顔をしているのに、おとなしく手を引かれていたり、大怪我をしたのか、大泣きする僕をおんぶしたり、高校の入学式での写真は、同じ高校だったのだろう、見たことも無いくらいの楽しそうな笑顔で、僕の頭をかき混ぜるように撫でて、それに対して僕も本当に楽しそうに笑っている写真もあった。 …きっとこの世界の僕らは、この写真が物語っているように、とても仲が良くて、大事な親友だったのだろう。 その時の記憶は僕には無いが、僕の精神が目覚めた、もしくは乗っ取ってしまった事で、仲の良かった筈の前の僕らの関係にヒビを入れるようで、大変申し訳無い気持ちになる。 けれど、僕自身も何故こちらに来てしまったのか、原因不明な今は、どうする事も出来ないのだが…。 アルバムに殆ど出て来る事を考えても、僕とディオはきっと『幼馴染』という関係だと思うのだけれど、肝心のディオには今だに会えていないというのは少々不思議に思う。何か理由があって離れているんだろうか…。 しかし…何故だろう、ディオに会えたら、今まで会えなかった人達全員に会えるような、そんな気がするのだ…。 このジョースター家のディオの因縁は、そもそもは僕とディオの出会いから始まった。もしかしたら、僕らの出会う事で、また、新たに、何かが始まるのではないか…。 そんな事を考えていた後日、まさか、本当にその人物と再会しようとは、僕自身思っていなかった。 [back]/[next] |