15
拉致られてからもう2時間ぐらいは立っただろうか、俺は教室でマルクと一緒に…

「あ、良し、俺、物覚え良いかんね、これとーこれでー」
「あぁぁ!!!」

トランプで遊んでます。
いや、俺も何でこうなったのか良く分かんねぇのよ?ただ、自己紹介されてから、数十分後に、逃げないって約束してくれたら、紐は解いてやる。と、言われて、分かった逃げない、と言ったら、めちゃくちゃ、あっさり紐解いてくれちゃいまして…。

『昼頃には全部解決してると思うし、そのときはちゃんと杜王に返してやるから、な?』

そんな感じに、非常に申し訳無さそうに笑われてしまうと、何か拉致られたのは俺なのに、少し良心が痛むと言いますか…確かに生徒会でやらなきゃならない仕事は沢山ある訳だけど、どうも俺には、マルクが嘘を付いているようには見えなかったし、とくに危害を加えられてる訳じゃないし、まぁちょっとぐらい付き合ってやっても良いかなぁと思った訳です。生徒会の皆、心配してっかな…俺がいなくても、どうか上手く立ち回ってくれよ…。と思いつつ。

それで暫く、トランプでババ抜きとか、ダウトとか色々やってたんだけど、予想外に盛り上がちゃって、マルクが俺の事ジョースターってずっと呼ぶから、んなかたっ苦しくしないで、JOJOって呼びで良いよって言ったら、JOJOって呼ばれるようになって、で、今、七並べの流れになったら、マルクのケータイから着信音が鳴り響いた。

「ちょっとタンマ」

七並べを中断させられ、暫く待っていると。

「はい、もしもし?あ!?えー…、あー、うん、そっか、分かった分かった」

何かしら驚いたり、頷いたりしながら、マルクはそう言うと、ピッと電話を切った。
そうして、俺の方をジッと見た後、やけに真剣な顔で、こう言ってきた。

「JOJOに話がある」
「?」
「七並べは惜しいけど、中断な、ごめん、また今度やろう」
「割と良い勝負だったもんねぇ」
「な」

マルクはそう言って笑うと、そのまま指を一本取り出して、左右に振った。

「今、杜王がちょっと大変な事になってる。そもそもJOJOを拉致したのは、お前に被害が及びそうだったからなんだけど…」
「……」
「シーザーがお前を保護したって事を、お前に被害を及ぼす存在達は気づかず、お前を探す為に、文化祭に乗り込んでしまったらしい」
「…え…えぇぇぇ!!?」

マジか…って言うか杜王警備薄いな!!いや普段はかなり厳重な筈…今日は、エイジャ学園との交流会てき存在を果たしているせいで、ちょっとその厳重、さが緩くなってたんだろう。それか招待状をうまいこと入手出来れば…。
って言うかそれ、シーザーをおびき寄せる為の罠なんじゃ…。そんな俺の考えを読んだのか、マルクが苦笑した。

「罠かもしれない、でも、まぁこの件は、全体的にシーザーのせいだから、シーザーがどうにかしにいく為に、杜王行くって言ってんだけどね」

ふと、昔の事を思い出しそうになった。柱の男を倒しに行くと、一族の誇りを胸に死んでしまった。
俺はそんな彼の誇りを知らなかった。知らなかったとはいえ、酷い事を言って傷つけて、結局謝れないまま…。
アイツは今でも変わらないのか、一人で解決なんて、そんなの無理に決まってるのに…。

「俺らが生徒会長のお前を拉致ってる今、それがバレたら他の生徒会メンバーが、俺らに容赦無いと思うんだ」
「…つまり?」

俺が、何か出来る事があるのだろうか、

「勝手に連れてきた手前、非常に申し訳無いが…」
「お、おい!?」

そう言って、マルクは俺に深々と頭を下げた。
お、おぉ…土下座、このやけに外国人人口が高すぎる日本でまさかのマルクが土下座。

「杜王に戻って、生徒会のメンバーを止めて欲しい、後、出来ればシーザーの助けになってやってくれたら嬉しい…っけど安心しろよな、お前の身は……」

マルクがそう言って、ハッと教室のドアの方を振り向く、何か…ダダダダッというおおよそ人間のものじゃないような足音が…聞こえ…マルクが笑った。

「シーザーが絶対守るからさ」

ガシャァァァァン!!!!!

「……」
「………」

…と思ったら、教室内の教卓側のドアが物凄い勢い付けて、吹っ飛んだ。教卓にブチ当たって、メキメキバキバキという、いやぁな音を立てたにも関わらず、その勢いは止まらず、ドアは、外が見渡せる窓にまで当たり、ガラスをこれまたガァァァンッと砕いて、やっとドアの勢いが止まった。
俺達はかろうじて、教室の真ん中にいたから良いものの、教卓側にいたら確実に死んでたんじゃないだろうか…。
土煙が舞い上がり、俺があんまりの出来事に、唖然とその様子を見ていると、目の前のマルクはさして気にした様子も無く、土下座から立ち上がって、その様子を呆れたように見ていた。

「はぁー、相変わらず派手な登場で…馬鹿力だなぁ」
「この教室がもろいんだよ…後で直す」

そう言いながら、ぶっ壊して、開けたドアから誰かが入ってくる。

「どうせもう杜王に吸収されるにあたって、改築とかするから気にしなくて良いんじゃない?」
「それもそうか」
「でも実際本当に作り直せるからな、凄いよなぁ…っていうか、さっきの登場シーン見て思ったけど、俺や後輩君が色々酷いってお前良く言うけど、お前も大概だって事気付いてる?」
「うっせー」

マルクに対して悪態を付く。懐かしい声だ。
前の世界では、老いていくたび忘れていってしまった。どんな声だったか…。
でも、分かってる、俺の魂のどこかで、俺は、この声を確かに覚えてる。俺がずっと…聞きたかった声だ。

土煙が晴れていく、金色の髪が、秋の朝の風に靡いたて、日の光にキラキラと輝いた。

両頬の痣、強い意思を宿したイエローグリーンの瞳、昔付けていた妙な形のハチマキ、今でもしてんのかそれ、でも特徴的な羽飾りは、今は首に掛けて、ネックレスみたいにしてるらしい。
全部が懐かしく、それでいて新しいと感じる。相変わらずの色男。制服姿も様になってるじゃないか、その姿が少しだけ眩しくて、俺は思わず目を細めた。

あぁ…やっと…見つけた。

…でも、俺の事は覚えて無い。多分って言うか、分かってた。ワムウからシーザーの話聞いたときから、覚えてたら、多分、会いに来るか探してくれると思うんだ。あの頃、あの世界で、喧嘩別れ何てしてしまったけど、俺の名前を聞けば、多分何かしら反応はくれるだろうと思う。マルクと出会ってそれは確信に変わった。
コイツは…俺の事は覚えていない。

それでも良い…いた。この世界で、息をして、両足で立って、生きてる。生きてる!!
それだけで、それだけで良い。覚えてなくたって…構わない…。心のどこかで、ズキリと胸が痛んだ気がしたけれど、そんなのは気にしない。今は何よりも、目の前で彼が動いている事が、

「…っ」

それだけが嬉しくて、どうしようもなく、泣きそうになっている。声が震えそうになるが。ダメだ。
アイツは覚えていないのに、ここで泣いたら、変な奴じゃないか、覚えていようが、覚えていまいが、出会ったら、まずは絶対に、笑ってやるって、決めてた。

アイツが振り返って、俺を真っ直ぐ見る。

「お前が、生徒会長のジョセフ・ジョースターか?」

逸らす事の無い。純粋な問い掛け。懐かしい声が自分に向けられて、さらに泣きそうになる声を、どうにか押しと殺す。あの時はごめん、謝っても許しきれないぐらい後悔ばかりした。でも新しい今を生きるシーザーにはこんな謝罪の意味は分からない。だから

「そういうお前は、シーザー・アントニオ・ツェペリ?」

俺は笑うのだ。手を差し出して。

「よろしく、俺はジョセフ・ジョースター…JOJO(ジョジョ)って呼んでくれ」

はじめまして、シーザー。


そんなジョセフを見守るように、時折現れては消えて行くシャボン玉が、一つ、パチンッと弾けた。

しかし、その中から、またシャボン玉が一つ現れる。

シャボン玉はフワリと浮いて、また姿が見えなくなった。

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