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隣町の『エイジャ高校』と吸収合併する事になった」
ここで、その場にいた生徒会全員の心が一つになった。
…ちょっと待ってください、明日『文化祭』なんだけどぉぉぉ!!!?

「ちょっと、待て、待ってよ、ワムウ先生、明日俺ら文化祭だよね!?」
「そんな新しい生徒をかまってる余裕なんてない!!」
「新しく生徒のリスト作成したりしなきゃならんのですが!!」
「警備体勢とかどうするの!?」
「文化祭の飲食店をやる側の人達、皆、校内の生徒と、その親子ぶん、ぐらいにしか材料考えてないですよぉ…」

ワムウに畳み掛けるように問い詰める俺達に、ワムウは酷く申し訳なさそうに、言葉を続けた。

「…明日エイジャの生徒は、合併の記念に我が校の文化祭に、参加する側として来るので、皆、しっかり友好を築くように、生徒会も、エイジャの生徒達のフォローをしっかりし、さらなる学園の発展に力を尽くす事……以上、カーズ学園長からの…お知らせ…だ」

ワムウが酷く疲れた…と言った様子でため息を付く。

「すまん…かなり前から話はあり、エシディシ先生が計画を進めてくれていると言うので、俺も安心していたのだが…まさか文化祭当日に全部の話がまとまるとは…そもそもな、カーズ学園長が、エシディシ先生に話を全く通していなかったことが判明して…それから、この忙しい時期だと言うのに、学園合併の相談や資料作り何かを…」
「先生…もう良い、もう良いよ!!」

そんな全く目が笑っていないて、乾いた笑いをワムウが浮かべたので、俺達はあんまりにもワムウが可哀想でちょっと、泣きたくなってて来た。カーズよぉ…俺が言うのもあれだけど、せっかく慕ってくれる部下がいるんだから、ちゃんと大事にした方が良いと思うぜ…。って言うかエイジャ高校なんて、そんな日本の学校になさそうな名前……

「エイ…ジャ…?」

エイジャ…エイジャって何だ、あれはもう昔の話。目の前のこの先生も、厄介な理事長も、五体満足なシュトロハイムも全てが関わった、俺の青春時代…。

それは、たった一つの石を巡る戦い…『エイジャの赤石』

「…っ!!」

頭の中でカチリと何かが当てはまった。これは予感だ。あくまでも、でも確かに事実なら、それが事実だったのなら…!!そんな希望が胸に灯る。ずっと探していて、まだ会えないアイツの事。

「ちなみに、お前らにさらに言わなくてはならない事がある…」
「え」
「エイジャ高校は、比較的穏やかな校風なのだが……エイジャ高校には、この付近でもかなり有名な不良どもが通っていてな…」

しかし、そんな喜びもつかの間、まだ疲れた目をしているワムウが続けた言葉に、俺は目を丸くする事になる。

「とくに番長が手の付けられない荒くれ者で、普段は大人しいようだが、大の喧嘩好きで、常に腰のホルダーの中に工具類を収納し、制服の袖の下にはレンチを隠し持っている、それで相手を殴りつけた後は、さらに素手で殴り返す。」
「え…」

待て待て、その話、どこかで聞いた事があるような気がするんだけど…。

「金色の髪の毛に、妙な両頬の痣、常にシャボン玉を吹いてる…おかしな男だが、先程も言ったように普段は大人しく、面倒見の良い性格なので、舎弟も複数存在しているらしい」

あ、思い出した、アイツと喧嘩別れして、リサリサに教えて貰った、昔のアイツの話とそっくり…って言うか、

「ソイツの名は…」

それ、

「シーザー・アントニオ・ツェペリ」

本人ですよ…ねぇぇぇ!!!?
流石にこの場で全力で叫ぶ訳にもいかないので、俺は脳内で盛大にツッコミを入れる事にした。

アイツ何やってんのぉぉぉ!!?お前『番長』って柄か!?いや貧民街時代の話聞いてたら、ちょっと納得かも知れないけどさぁぁ!!!

「そして通り名は『鮮血の狼』だ。今後学校で付き合っていくうえで、もっとも厄介な人物になるであろうと思うので、皆鉢合わせたら全力で逃げろ、止める自身があれば止めても良いがな、番長なだけあって喧嘩慣れしてるからな、気をつけた方が良い」

俺達に注意しつつも、止められるなら止めろと言い…心なしか先程まで死んだ魚みたいな目をしてたくせに、若干目が輝いたワムウに、今更新たな発見をした。あ、コイツ、普段は見えないけど、この時代でも喧嘩大好きなんだな…と、
後さぁ…

『鮮血の狼』って何ですか…

どうしよう、俺、シーザーにすげぇ会いたいと思ってたけど…正直…今のアイツには、あんまり会いたくない。

「理事長を止められなかった俺が言うのもアレだが、生徒会役員諸君、早急にこの連絡を全生徒に…食材の補助はコチラがわでフォローしよう、それから、明日は」

ワムウの言葉に俺達はもう逃げられない段階まで来てしまった事を再確認させられる。俺があれだけ会いたいと願ってたときは出て来ないくせに、会いたくないと願った途端に、関わらなきゃならなくなった、シーザーを思い、若干ムカついたが。結局、シーザーちゃんともそのうち鉢合わせちゃう訳で、俺は、それまでちょっと覚悟を決めて置かなくてはならないのだ。

「忙しくなるぞ」

そう締めくくった、文化祭前日の生徒会室、生徒会のメンバーは、ため息をついて、返事をする変わりに、ワムウの肩を一人一人、叩いてから、このことを、生徒達に知らせる為、生徒会室から出ていった。

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